【体験型観光が日本を変える330】勝ち組の条件は3つの行動 藤澤安良


 行楽の秋真っ盛りである。温暖化の影響なのか、紅葉が遅かったり、期間が短かったりとゆく秋を惜しんでいる。日本は四季の移ろいが鮮明な国で、カナダのメープル街道やドイツのロマンチック街道も紅葉が見事であるが、日本の紅葉は赤や黄色もだいだい色もあり、色づかない緑と相まって格段に美しい。神社仏閣の古い木造建築物と調和してさらに人々の心を打つ風景になる。

 中でも、京都の紅葉と社寺の和のバランスは外国人観光客の人気を集めている。しかし、そこにはオーバーツーリズムの問題がクローズアップされることになる。交通の問題だけではなく、三大都市圏と福岡市の宿泊料金の高騰が日本国民には大きな負担となっている。

 その結果、日本人より外国人が多い観光地が多くなっている。コロナ禍で3年間痛めつけられた経済を取り戻し、物価高を克服するためにも値上げは仕方ないにしても、オフ期の2倍から3倍はざら。驚くばかりの金額になっている。

 円安で、所得の高い外国人にとっては高く感じないものの、日本人の庶民感覚ではとても高いと感じている。コロナが5類になって、行楽シーズンといえども、日本人の旅行が今一つ伸び悩んでいる。つまりこのままでは、インバウンドが獲得できないと業績が上がらない観光施設や宿泊施設が苦戦を強いられることになる。

 このところ富裕層をターゲットにした施設や値決めが増えている。しかし、所得が上がらず、物価高に苦しむ庶民も少なくない。そんな家族や夫婦での旅行が、以前のように決して格安でなくても、出かけやすい値ごろ感の商品が必要になる。

 地方の宿泊施設や観光施設の値上げ幅は、著名観光地や三大都市圏より格段に少ない。つまりは、お客側から見ると地方や田舎といわれる地域が狙い目となる。田舎や認知度が低い地域にもチャンスがある。自然や景観は細工でないが、接客接遇のレベルアップと料理は、努力次第で顧客満足度を上げるべく変えられる。

 コロナ後の立ち上がりが悪く、苦戦している宿泊施設も少なくない。マーケットはコロナ前と価値観やニーズが大きく変化している。過去の延長線上に未来はない。同じことをしていては業績アップにつながらない。

 とりわけ、公設民営の指定管理などの3セク施設は、経営の理念やそれに向かって挑戦する志と行動がない場合が多い。また、長年にわたって訴えているが、宿泊施設は温泉に浸かり泊まりに来るものだけなら、遠くまで来なくていい。周辺地域の自然、観光施設、社寺や史跡に加えて体験プログラムなどの魅力が旅の目的提案になる。

 もう一つは金太郎あめのようなどこででも食べられる業務用や冷凍輸入食材ではない地産地消の食である。地方の宿泊施設の生きる道は、自社の(1)接客接遇と(2)目的提案と(3)食―に他ならない。私も2~3年にわたっていくつかの赤字の施設をお手伝いしており、今年度決算ですべて黒字に転換した。(1)(2)(3)を着実に行動することが勝ち組の条件となる。

 
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