桜の開花予想や春めいた気候は旅への動機になる。北陸新幹線が16日に敦賀まで延伸した。乗客の中には単に往復乗車しただけの人もいたという。JRの収入にはなったが、宿泊、飲食、観光、物産などの地域の経済効果はないことになる。地域の経済に波及させたいものである。
そんな中、「北陸応援割」が始まったが、能登半島地震の甚大な被害の状況が長い間テレビで流れたためなのか、国民の反応は大きく、申し込みが殺到したようだ。
しかし、補助金の金額が少なくて売り出し日の半日で予算額に到達した宿も多いと聞く。お客の不満を宿泊施設が聞くことになる。10倍の規模でやるべきだった。私も行きたいと思っていたが、割引がないなら先に回すことにする。
全国各地に出向いているが、島国日本のさらに離島を訪ねることが少なくない。日本の田舎の課題をたくさん抱えている。
少子高齢化と人口減少は著しく、高校の廃校、小中学校の統合。2次交通の路線バスがなくなり、行政でコミュニティバスといえるのかワゴン車が動いている。タクシーもタクシー代行もレンタカーもなく、港に3台の電気アシスト自転車が借りてくれるのを待っている。
ライドシェアは都市の実証実験よりも過疎の田舎でこそ必要に迫られている。旅館は1軒あるが、料理の評判はすこぶる悪い。居酒屋もそんな条件だから徒歩圏の人だけが客となり、採算は取れそうにないことから存在しない。
地元との懇親会は集落の公民館に料理や飲み物を持ち寄り行った。さすがに地元漁師がつくった取れたての刺身はいずれもおいしいのは間違いない。
宿に頼み込んで公民館への迎えを依頼した。その宿の朝食は前評判通りひどいもので、漁村なのに魚介類は皆無、サラダとスクランブルエッグがプレート皿に乗っているだけ。そして漬物とみそ汁である。
3セクの宿とはいうが、あまりにも期待外れであり、観光振興、交流人口拡大をどう考えているのか、何も考えていなさそうであるが、首長をはじめとして行政の姿勢が問われることになる。接客や料理など素人でも分かることから改善すればよい。
住んでよい町、訪れてよい町が成立しなくなる。ただ、訪れた漁村では、港が整備され、水産庁が漁業振興に力を入れている様子がうかがえたし、漁業者もとてもよく働く人ばかりだとの説明があった。
案内してくれた人が港で船を見送る際に紙テープで送ってくれた。とても不便で厳しい離島の生活環境にありながら、頑張って生き抜いている島民はとてもいい人たちであった。
旅は美しい風景だけではない。荒海に漁に出る人、棚田を耕し続けている人など、艱難(かんなん)辛苦を乗り越えた生き様にフォーカスした「人に会う旅、人に学ぶ旅」がとてもいい旅になる。
人には人の心を動かす力がある。地域資源がない、観光コンテンツがないという地域でも、見つめ直したら、命ある人こそ次の時代の掛け替えのないコンテンツであることが分かる。観光の視点を人に変えてみるべきだ。