東京は梅雨入り後、雨が続くこともなく、真夏の炎天下が続いた。一方、九州では、梅雨前線の動きに伴い線状降水帯が停滞し、福岡県南部や大分県北部での600ミリを超える集中豪雨となった。土砂崩れや河川の氾濫による家屋の倒壊や流失が相次ぎ、死者や行方不明者が多数に上った。3年前の広島市安佐南区の土砂崩れや2年前の常総市の鬼怒川氾濫などを思い起こさせるような甚大な被害をもたらした。
被災者の高齢者は一応に「生まれてから経験がない災害」と言う。つまりは1世紀に1回もないような大雨洪水となった。近年は局地的な豪雨が多くなっているのではと思える。異常気象と言えるような事象が続くと、それは最早、通常の気候になってしまう。温暖化など地球環境に変化が起こっているのは間違いない。
被害の映像からは、おびただしい水量と大きな流木が川の氾濫や家屋の倒壊原因になっている。間伐が進まず放置された人工林の問題も見えてくる。予測できない事態と言い続けるだけではなく、あらゆる自然災害のシミュレーションの上に、命を守る備えがさらに必要な時代となった。
過日、1月1日現在の日本の人口が発表された。1億2558万人と8年連続で減少し続けているが、増加したのは首都圏4都県と愛知県、沖縄県の6都県のみとなった。東京、名古屋、関西の3都市圏で6500万人近くに上り、全国の50%を超えているが、名古屋圏と関西圏は人口が減少し、東京圏だけが増えている。ますます大都市や首都圏への一極集中が進んでいる。
人口面での地方創生は困難を極めている。地方に仕事の選択肢が少なく、生きる糧を得ることが困難となれば、地方から都市への流れは止められない。また、定年後の田舎暮らしが望まれるなら、それも有り難いことだが、地方の高齢化に拍車がかかる。人口が増えている沖縄は、他の地域とは気候風土や歴史、文化に明らかな違いがあり、観光地としても、修学旅行の目的地としても魅力が大きい。土地面積や人口に対する観光客数が多く、宿泊施設や体験型観光など観光関係産業の従事者も多い。観光産業の発展こそが地方創生の鍵となる。
体験交流による観光振興は、インバウンドのリピーターの動きも相まって、いずれの地域にもチャンスがある。市町村やその広域連携によって観光政策を推進しなければならない。国政と併せて抜本的な政策が求められている。
一定の財源の投入は必要であるが、誰が動かすのか、人材こそが成果の鍵を握っている。2、3年で替わる行政職員でも、前年踏襲型の事業や経済効果、生産性を追わないイベント屋のような観光協会でも、器だけのDMOでも、旅行業経験者でも、看板やレッテルだけでは未来は拓けない。
すべては地域の未来を思い、地域振興に向かう志と行動力に他ならない。さらにはノウハウの習得や事業システムの構築が不可欠である。大学や専門学校では、旅行業や宿泊・観光施設の人材育成が中心である。体験交流型観光のコーディネート組織の人材の育成が必要な時代である。