【体験型観光が日本を変える41】定住促進に体験型観光 藤澤安良


 梅雨らしい梅雨がなかったからなのか、東京は8月に入ってからお盆までずっと雨が続いた。夏は夏らしい気候でないと、海水浴客も、プールの利用も激減し、ビアガーデンや飲み屋、家庭でのビール消費量も例年の3割以上の減少とか、経済に大きく影響を及ぼしている。すでに終わった日の消費を取り戻すのは難しいが、可能性はないわけではない。

 夏休みの海外旅行の定番である日本から近いグアム島旅行のキャンセルが相次いでいる。グアムの米軍基地をめぐって、ミサイルだの、PC3で迎撃だのと、北朝鮮と米国の問題が続いている。

 そんな中で戦後72年目の夏を迎えた。失われた尊い命は戻るべくもないが、戦争体験者やその遺族の心からの恐怖、悲しみは消えることはない。その体験者から生の声が聞けるのも、後10年ぐらいであろう。戦地に赴いた人だけではない。本土空襲で46万人もが犠牲になった。おぞましく、恐ろしく、地獄絵図のような光景は思い出したくもないと口をつぐみ、脳裏から消し去りたいと思う人が多いと聞く。未来のために伝え語ってほしい。

 同時に、特攻基地や防空壕、掩体壕、砲台跡なども大切にし、後世に残し伝えればならないものなのだと思う。出征時の日の丸への寄せ書き、召集令状(赤紙)や米軍が降伏を促すために撒いたビラ、負け戦を勝利のように書いた新聞なども貴重な歴史の証言者である。関連資料が家庭のどこかで眠っているかもしれない。それらも戦争の証人として、歴史資料館などで展示し保管する必要がある。

 過疎高齢化か進む田舎では、古民家がどんどん空き家になっていく。「またいつか、いずれまた」「先祖から引き継いだ家なので」などと思っている未練が、貸さずに売らずに放置することになる。さらには更地にするのに解体費用がかかり、割に合わずに放置し廃屋になる。

 一方で、成人男性の約半数が田舎暮らしがしたいと思っているとの統計がある。新建材を使ったハウスメーカーの住宅は、使い勝手はいいが、田舎の風情に合わないことから、古民家に住みたいと思うニーズは拡大している。買い手があるのに、物件はあるのに、貸しても、売ってもお金が入るのに、朽ち果てるのを待っていては誰もが幸せにならない。持ち主に決断を促すべきであろう。

 いきなり住まなくても、何棟か体験古民家を整備し、お試しで1泊から数日泊の田舎暮らし体験を始めてもいい。地域の人々と交流し、人間関係も確認し、買い物などのライフスタイルも理解した上で住民票を移せばいい。その一つ手前に、地域を知ってもらうため、来てもらうために、あらゆる体験交流プログラムがある。交流人口の拡大が定住につながる公式である。つまりは、体験型観光が地域の活性化につながっている証でもある。

 
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