観光立国実現を通じて、会員、地域、国に貢献できる組織へ
2021年11月15日、全日本ホテル連盟(ANHA)は創立50周年を迎えた。高度経済成長期に増加した国内の宿泊需要を担うべく1971年11月15日に誕生した「全日本ビジネスホテル協会」は、時代や宿泊ニーズの変化、会員数の増加や会員施設の業態の多様化に呼応しながらさまざまな活動を行い、組織名の改称を経て、観光業界・宿泊業界において重要な役割を果たしてきた。コロナ禍を経て、今後の方針を模索する中、同連盟は清水嗣能会長(福井県・ホテルリバージュアケボノ)を中心に活動方針「MVVS」(Mission、Vision、Value、Statement)を策定。会員ホテルへの裨益(ひえき)に加え、観光立国と地域貢献のための組織へとさらなる進化を遂げようとしている。コロナ禍で国内のホテル業界に大きな変革の波が打ち寄せる中にありながら、それ以上に大きく変わり、より大きな役割を国、地域、そして会員ホテルに対して果たそうとする同連盟の現在と今後の姿が、清水会長や小林磨史副会長(長野県・ホテルニューステーション)、関係各位のコメントから色濃く、かつ明確に見えてきた。
連盟の歴史
50年前の1971年(昭和46年)11月15日に「全日本ビジネスホテル協会」が誕生しました。背景として、64年(昭和39年)10月に開催された、当時最大の国策であった東京オリンピック大会を成功に導くために、その前年に「観光基本法」が制定されたこと、さらには高度経済成長に伴う宿泊需要の増大がインキュベーターとなっていました。当時、各地で低廉・清潔・安全・気軽なホテルが建設され始めたころで、これに時代の趨勢(すいせい)を見た元運輸省観光部整備課長で国際観光施設協会の会長であった重松敦雄氏の提言のもと、有志が集まり、和製英語として使われていた「ビジネスホテル」を名称に使った協会を設立しました。
その後、バブル期を経てさらなる生活の高度化や多様化を背景に宿泊単機能でない会員ホテルも増加していったことから、92年(平成4年)に会の名称を「全日本シティホテル連盟(JCHA)」としました。
50周年の意義
そして昨年度、おかげさまで創立50周年という節目を迎えることができました。これまで歩んできた道のりを振り返り、これから歩んでいくべき方向を見定めることが、50周年の意義であります。そのためには「自分たちの組織は何のために存在するのか」、存在意義を確かめ直し、次代につなげていかなければなりません
連盟の目指す姿
この50周年を契機に連盟のあるべき姿について自己探求するために、新たに「MVV+S(Mission、Vision、Value、Statement)」を策定いたしました。
私たち連盟のMission、すなわち使命は「時代のニーズを捉え、革新性をもって、会員ホテルの価値向上を支援すると共に、観光立国の実現と地域の発展に寄与する。」としました。「革新性をもって」という言葉を入れたのは、連盟の前身である全日本ビジネスホテル協会が、シティホテルや都市旅館しかなかったような時代に新たに「ビジネスホテル」という業態をつくり上げた先人の知恵や気概を私たち連盟のDNAとしたかったからにほかなりません。
そしてVisionに掲げる「会員ホテルの成長と挑戦を促し、日本および地域に新たな風を起こすイノベーターになる。」とこれからめざすべき方向性を示し、これらを凝縮し、昇華した思いを「新しい物語を、ホテルから。」というStatementに表現しました。これは連盟の未来をつくる活動であります。
改めて自分たちの作った理念であるMVV+Sを見つめ直してみますと、そこにはこの連盟がイノベーターという人づくりに取り組むことで「観光立国の実現を通して、社会貢献を果たすことこそが連盟の存在意義である」というメッセージが見えてきます。つまり「人づくりによる、国づくり」です。
名称変更と具体的活動
さらに、私たちは創立50周年を機に新しい1ページを刻むために、昨年4月1日付で「一般社団法人全日本シティホテル連盟(JCHA)」から「一般社団法人全日本ホテル連盟(ANHA)」へと名称を変更しました。
この名称変更には、シティホテルやビジネスホテルという小さな業態枠に捉われることなく、宿泊業としての生業そのものが社会の役に立つも のであり、当連盟はそれらを包含するホテル業の集まりであるという意味が込められています。「自分たちのため、だけではなく、ホテル業を通した国や地域への貢献こそが自分のたちの存在意義である」と明確に示したことが、この50周年を契機とした連盟としての大きな前進であります。
その成長の証として、昨年度は長野県・松本市と福井市において、そして今年は金沢市において50周年記念事業として観光立国実現をめざした地域活性化をテーマにタウンミーティングを開催しました。官民含めた各地域の観光事業者を巻き込んだ象徴的な事業として、これからの連盟活動の方針を示すものであります。
感謝と決意
末筆ながら、これまで当連盟のご指導を賜ってまいりました国会議員の先生方や観光庁さまをはじめ、創立や発展を支え、ご尽力いただいた先輩諸兄並びに会員各位とその従業員の皆さま、さらに私たち業界を支援して下さっている賛助会員の皆さまに、これまで当連盟を育てていただいたことに深く感謝の意を表し、御礼のごあいさつとさせていただきます。
これからも当連盟は、個性豊かな会員ホテルがそれぞれに新しい物語をつむぎ、その価値を向上させていくための活動を支援し、力強くダイナミックに取り組んでまいります。