SNSで「映(ば)える」と人気の「ハッセルバックポテト(Hasselback Potatoes)」をご存じだろうか? ひと言で表現するなら、蛇腹状に切り込みの入ったジャガイモのオーブン焼きだ。薄くたくさんの切れ目を入れて天火で焼くと、切れ目がアコーディオンのように開くことから、「アコーディオンポテト」とも呼ばれる。
作り方はシンプルで、料理初心者でもチャレンジ可能。それでいてフォトジェニックな上、北欧発祥というオシャレ感も手伝って、数年前に話題となり、今も人気は衰えていない。ハッセルバックという名は、1953年にスウェーデンのストックホルムにある「Hasselbacken Hotel and Restaurant」で、研修生シェフが考案したことに由来するそうだ。
皮ごと焼くから、皮が薄い新ジャガがおススメ。…ところで、新ジャガっていつ頃、出回るんだっけ? ここでチョットおさらい。
かつて「二度芋」「三度芋」とも呼ばれたジャガイモは、年に2~3回収穫できる。産地によって作付け時期が違うので、収穫時期も南から桜前線のように北上する。生産量全国2位の長崎県や3位の鹿児島県では、冬に作付けしたものを春に、晩夏に植えたものを冬に収穫する。1位の北海道では、作付けが春で収穫が夏。つまり春先から市場に出回る新ジャガは主に九州産、夏の新ジャガは北海道産だ。ジャガイモは通常、貯蔵、熟成させるが、新ジャガは収穫後すぐに出荷されるのでみずみずしい。
ハッセルバックポテトに話を戻そう。作り方はまず、皮付きのジャガイモに、2~3ミリ幅程度の細かい切り込みを入れる。芋を割り箸の間に挟んで包丁を入れると、切り落とす心配がない。切り込みが細かければ細かいほど、深ければ深いほど、焼き上がった際、奇麗に開くのでここが肝心だ。もう一つのポイントは、その切れ目の間を水で洗い流すこと。デンプンを取り除かないと、せっかくの切り込みがくっついてしまうのだ。
その後、天板に並べてオリーブオイルや溶かしバターなどをかけ、250度のオーブンで30分程度焼き、表面に焦げ目がついたら出来上がりだ。芋の味付けはさまざま。切れ目の間にベーコンを挟んだり、チーズをトッピングしたりなど、アレンジレシピも多数ある。
筆者はいつも、くっつき防止のため、切れ目の間に刷毛でオリーブオイルを塗って8割方焼き、仕上げにおろしニンニクを混ぜた溶かしバターとハーブソルトをかけてもう1度焼く。美しく蛇腹に開いた表面はカリッカリで、中はホクホク、超ベリウマ♪
今ちょうど新ジャガの季節だから、いろいろ試してみたい。白いサワークリームに赤い角切りトマト、緑のシブレットを載せたら映えるだろうなぁ。ブルーチーズを挟んで焼いて、蜂蜜を少しかけてみようか? ゴルゴンゾーラのピザと蜂蜜のマリアージュ同様、口福の味になるに違いない。あれこれ想像するだけで楽しいハッセルバックポテト、ぜひお試しあれ!
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。