【口福のおすそわけ 414】トルティージャ♪ 竹内美樹


竹内氏

 前号のパエリアと双璧とされるスペイン料理「トルティージャ」こと「スパニッシュオムレツ」。メキシコ伝統料理「トルティーヤ」と紛らわしいが、コチラはトウモロコシ粉をクレープ状に焼いたモノだ。

 トルティージャ同様円形で、よく似たイタリア料理「フリッタータ」とも混同されるが、別物だ。コチラはタルト生地のないキッシュのようなモノ。野菜などいろいろな具を入れ、オーブンで仕上げることが多い。一方、トルティージャの具は基本的にジャガイモが主役で、オーブンは使わずフライパンだけで焼く。

 家庭料理として親しまれるお袋の味であり、バルの定番メニューでもある。多くの店で、カウンターの上にそれらしき物が鎮座しているが、大きさや焼き色が違い、温めて提供する店もあれば、切り分けたまま、常温で提供する店も。

 ジャガイモと卵が大好きな上、あともう1品というとき便利なので、よく作る。いつも使うのは直径20センチのフライパン。作りやすくて、出来上がりサイズもちょうど良い。ジャガイモ1個に対し、卵1個くらいの割合が目安で、大抵5個ずつ程度使う。他はみじん切りか薄切りのタマネギ半個分と、オリーブオイルと塩があれば良い。

 まず、ジャガイモを厚さ5ミリ程度のいちょう切りにして、フライパンに詰めていく。水にさらす必要はない。そこに、ジャガイモの表面より少し下くらいまでオリーブオイルをジャバジャバ入れ、中火で時々混ぜながら火を入れる。オイル煮という感じだ。サスガオリーブオイル生産量世界一のスペインらしい使い方だが、この油は炒め物などで再利用可能。ケチると、味が変わってしまう。しばらくしたらタマネギを加える。パンチが欲しければ、みじん切りのニンニクも入れる。

 ジャガイモが崩れるくらい火が通ったら、ザルにあげて油を切る。熱いうちに卵を溶いたボウルに入れ、木ベラでジャガイモを潰しながら、よく混ぜ合わせる。味付けのタイミングは、ジャガイモが生のうちに塩を振る人、卵に味を付ける人などさまざま。筆者は、卵と具材を混ぜ合わせるこのタイミングで味を付ける。

 フライパンにコレを戻して焼き、周りが固まってきたら返すのだが、そこが最も肝心なところ。お皿を使うと滑りそうになるし、手も熱いので、筆者はフライパンより一回り小さい鍋ぶたを使う。ふたをキッチリ被せたら、左手でしっかり押さえ、右手でエイヤっとフライパンをひっくり返す。逆さになったふたの上から、またフライパンに滑らせて、反対側を焼く。本場では、この作業を何度か繰り返すようだが、筆者は卵がゆるい方が好きなので、ひっくり返すパフォーマンスは1回きり。誰か見ていれば、大概「おぉ~っ!」と拍手を送ってくれる。

 酒のさかなだけでなく、スペイン式サンドイッチ「ボカディージョ」の具としても人気。大人から子供まで大好きな、国民的ソウルフード、トルティージャ。日本人の玉子焼き愛と似てるかも? また作ろうっと♪

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
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