フルーツの中でも、特に好きなのがマンゴー。でも、食べごろが難しく、残念! なことも。だが、決してガッカリしないのが、宮崎県産完熟マンゴーだ。中でも超高級ブランド「太陽のタマゴ」は、今年4月同県の初セリで2玉60万円という過去最高値を付けた。ブランド化してちょうど25周年というこのマンゴー、それまでの道のりは決して楽なものではなかったようだ。
熱帯地域の果物マンゴーが、国内で初めて栽培されたのは、明治時代中ごろだったとされるが、なかなか成功しなかったようだ。日本は雨が多いが、マンゴーは花粉が雨にぬれると受粉できず、結実しないのだ。その後ハウス栽培技術が確立し、沖縄県で栽培が本格化。1984年、それを宮崎県で導入したのだ。
JA西都で栽培農家を募集したところ、最初はたった2戸しか取り組もうとせず、最終的にわずか8戸でのスタートとなった。だが、炭疽病に悩まされるなど順調にはいかず、自然落果して売り物にならないことも多かった。そんな中、JA西都の技術員が、落果したマンゴーが驚くほど甘く美味であることを発見。マンゴーの品種は数百あるといわれるが、このアーウィン種は完熟すると自然落果する性質があったのだ。
何とか完熟したマンゴーを収穫できないかと試行錯誤の末、1987年に自然落果をネットで受けとめる「ネット収穫法」を生みだしたという。一つずつ手作業でネットを被せるのだが、早く着け過ぎるとネットの跡が果皮に残ってしまうため、完熟直前でないといけない。それだけではない。10メートル以上になってしまうマンゴーの木を、手入れしやすいよう1・5メートル程度に剪定、実を付けた後摘果され、一つの枝に一個の実だけが残される。太陽が十分当たるように、一個ずつ針金やひもでつるされ、大切に育てられるのだ。これだけ手間暇が掛かれば、高価格になるというもの。
その最高峰が「太陽のタマゴ」である。糖度15度以上、重さ350グラム以上などJA宮崎経済連の認定選果基準を満たすものを、1998年にブランド化したのだ。宮崎県産完熟マンゴーの約15%しかない、超希少品だ。
ところで、マンゴーは一つの枝に数千もの花を付けるというが、コレがムチャクチャ臭いんだそう。受粉のために、腐敗臭でハエをおびきよせるのだとか。…え? ハチじゃないの?。
実はマンゴーの原産地熱帯地域では、ミツバチが活動できる気温25度を超えてしまうため、30度以上でもOKなハエを花粉媒介としているのだ。ちなみに日本のハウスでは、受粉用にハチを飼っているそう。
そんな宮崎県産完熟マンゴーは、今が旬! 完熟だから、食べごろを気にせずスグ食べられてサイコー♪ 東京だと自分ではちょっぴり買いづらい価格だが、同県を訪れた際購入したり、知人から頂いたことも。真っ赤な実に詰まったジューシーな果肉は、とろけるおいしさ♪ あぁ、また食べたい。…清水の舞台から、飛び降りちゃおうかな?
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。