その甘さは、まるでフルーツ!…。 何が? って、トウモロコシだ。野菜だよね?と疑うくらいだ。食が細くなってきた80代の母が1本丸々食べてしまうほど美味。トウモロコシの名の由来は唐、つまり舶来のモロコシ(タカキビ)なのだが、唐ではなく糖なんじゃないかと思ってしまった。
イネ科トウモロコシ属のトウモロコシ、世界的には米や小麦とともに、主食となる、世界三大穀物の一つ。飼料にもなり、コーンスターチというデンプンや、コーン油、バーボンなどお酒の原料にもなり、近年はバイオエタノールの原料としても注目されている。
日本では現在甘味種(スイートコーン)の未熟果を食用としているが、かつて天正年間にポルトガル人から伝えられたとされるのは硬粒種(フリントコーン)。他にも、ポップコーンにする爆裂種、飼料や工業原料に使われる馬歯種(デントコーン)などがある。
「硬い粒」だから、江戸時代には粉末を餅にしたり、雑穀としてかゆに混ぜて食べていたようだ。スイートコーンが米国からやってきたのは、第2次大戦後といわれる。その後さまざまな品種が開発され、甘味が強いトウモロコシが登場。その一つが「味来(みらい)」で、その甘さから、「スーパースイートコーン」などとも呼ばれる。
冒頭のトウモロコシは、香川県観音寺市の久保和則氏、美千代さんご夫妻が育てた「味来1364」という品種。甘いだけでなく、粒の皮が薄く口に残らないし、果実も軟らかい。同市の知人を介してご縁に恵まれ、筆者が役員を務める弁当製造販売会社では、毎年約千本購入させていただいている。シーズン中数回に分けて届くたび、社内販売すれば即完売の大人気!。
どうしてこんなに甘いのでしょうか?と、奥さまの美千代さんに伺った。ブロッコリーを収穫した後に畝(うね)を作って植えているのが良いのかもしれないと。除草剤は使わず、雑草は全てご夫妻が手で抜いているとのこと。たった2人で2反(たん)…、ってことは、600坪もの世話をするなんて、気が遠くなりそう。1シーズン約9千本を、最も甘みが強くなる早朝4時ごろから収穫するという。
2月末ごろ植え付けをし、6月初旬から収穫を始めるそうだが、苗が大きくなれば横に出てくる芽を切り、ある程度育てば土を盛って倒伏(とうふく)しないよう固定するなど、その間は気が抜けないらしい。今年はちょうど受粉時期に雨が多かったので、実がなるか心配されたようだ。手間暇と愛情をかけて育てられた味来、その分甘味も増すのだろう。
深緑色の包葉をはいでゆき、薄皮1枚残してラップで包み、1本につき5分、2本までならレンチンOK。「孫が好きだから一度にたくさん食べるときは蒸す」と。ゆでるとうま味が逃げてしまうからダメ、とも教わった。
漢字でトウモロコシは玉蜀黍と書く。「蜀」は外国を表し外国の黍(きび)となるが、「玉」は美しいからだそう。黄金色に輝くトウモロコシ、今シーズン最後の1本を、大切にいただこう♪
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。