先日、福島県西白河郡中島村の野木富士男さんから、ブロッコリーをいただいた。米作中心の農家だが、野菜もいろいろ栽培されている。
野木さんの畑では、今収穫の最盛期。ブロッコリーって、通年スーパーに並んでいる気がするが、それは日本が南北に長く、各地の収穫時期がずれているから。かつては品薄の時期に輸入物が入荷するからといわれたが、現在では国産物が7割を上回った。料理にチョコッと添えるだけで彩りが良くなり「映(ば)える」という理由や、「緑黄色野菜の王様」と呼ばれるほど栄養価が高いことで人気を博し、需要が伸びているのだ。
そんなブロッコリー、生まれは地中海沿岸で、野生種のケールが起源といわれ、ローマ時代から日常的に食べられていたようだ。食用となるのは「花蕾(からい)」、つまり蕾(つぼみ)の固まりと茎。日本には、明治初期に観賞用として渡来。第2次大戦後、食用として栽培されるようになったが、時を同じくして日本にやって来たカリフラワーが、常温でも外見が変化しにくいのに対し、ブロッコリーは低温保存しないとすぐに変色してしまうため、当初流通量はカリフラワーの方がずっと多かった。だが、予冷設備や低温輸送技術の発達に伴い、1980年代以降ブロッコリーの流通量が急速に拡大、平成に入ると出荷量がカリフラワーと逆転した。ちなみに、両者は同じアブラナ科で、カリフラワーはブロッコリーが突然変異により白化したものといわれている。兄弟のようなものだが、カリフラワーは淡色野菜である。
緑黄色野菜と淡色野菜の違いについては、別の機会に譲るとして、野木さんのブロッコリーの話に戻そう。奥羽山脈と阿武隈高地に挟まれた、福島県内陸部にある野木さんの畑では、ブロッコリー栽培は二期作。年間栽培スケジュールは、2月中旬の種まきに始まる。人間で言えば電気敷布のように、土の下に電線を通し、暖かくして苗を育てるそうだ。その後連結ポットに仮植えし、10センチ程度に育つと圃場(ほじょう)に定植、5月上旬ごろから収穫できるという。次は7月下旬ごろ、連結ポットに種をまき、ハウスで育て、少し大きくなったら畑に定植。それが今収穫期を迎えているのだ。
「真夏に、酷暑に耐えつつ種をまくのは、とてもしんどい」と野木さんは言う。今年は特に、今まで経験したことのない暑さだったので、苦労も多かったそうだ。高温障害は、苗がしおれたり葉が焼けたりするだけでなく、根腐れ病などさまざまな病気の要因となる。さらに、炎天下での圃場の雑草処理は重労働だ。害虫も増え、その駆除にも追われる。今夏は、暑さによる農作物の品質低下や収量の減少といった実害の報道が多かったが、現実は想像をはるかに超えていたに違いない。
もう一つの大きな問題は、根こぶ病。根にこぶができて、水分を吸い上げられずに枯れてしまうのだという。その原因とは? 苦労して栽培されたブロッコリーのおいしい食べ方も含め、続きは次号で♪
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。