最近、中華料理店での会食が続いている。といっても高級中華ではない。先週は某施設にて、閉店後の店舗での打ち合わせ前に腹ごしらえ。横浜中華街発某チェーン店でオーダーしたコースは、前菜に棒棒鶏(バンバンジー)、お次は小籠包・焼売・エビ蒸し餃子(ギョーザ)・春巻の4種の点心。メインのエビチリに、名物の焼きそば、海鮮スープ、デザートまで付いて、何と1人税込み2200円!
他に、青菜炒めと炒飯を追加した。実は筆者、どこの中華料理店に行っても、青菜炒めは必ず注文する。野菜を食べた方がカラダに良いというのもモチロンだが、その店のレベルがある程度分かるからだ。こういう言い方は失礼かもしれないが、青菜炒めはシンプルだからこそ、料理人のスキルが問われる。ベチョッとしていたら論外だ。
この店の青菜炒めは、合格どころかムチャクチャ美味! 使われていたのは、青梗菜(チンゲンサイ)。たまにかみ切れないようなヤツと出会うが、食べやすい切り方で、ニンニクも効いていて、味付けが抜群♪あっと言う間にペロリと平らげてしまった。
小籠包は、味に特徴はないが、ちゃんと肉汁あふれる仕上がり。皮がモチッと透明なエビ蒸し餃子も平均点。店の人気商品というエビチリも、エビ自体がショボ過ぎず、味付けもそこそこ。つまり、青菜炒め以外の料理は、可もなく不可もなくというカンジ。だが夜遅い時間なのに、満員の盛況なのは、ナゼだろう?
コスパの良さもあるかもしれない。でも一番の理由は、冒頭に「名物」と書いた焼きそばの存在だろう。あたりを見回すと、どのテーブルにも必ずコレが載っている。福建省出身の創業者が開発したという焼きそばは、唯一無二。かつてテレビにも取り上げられ、行列ができたそうだ。
一体どこが他と違うのか? あんかけ焼きそばは普通、そばの上にあんがかけてある。だが、ここでは何と、あんを焼きそばで包んでいるのだ! 卵液の助けも借りてカリカリに焼き上げられたそばには、何も載っていない。ただ焦げ目のついた焼きそばにしか見えないが、コレを切ってみると、中から白菜、もやしなどの野菜と豚肉のあんが、トロリと出て来る仕組み。
見た目のシズル感は絶対的だ。そこには、逆転の発想があった。普通なら上に載っているモノが下に隠れているだけで、大きなインパクトを与える。
そう言えば、みたらし団子の逆バージョンもある。団子にタレがかかっているのではなく、団子の中にタレが仕込んであり、食べると中からトロリとタレが出て来るという、同じ仕組みだ。
どうやって取り分けるのだろうと思っていたが、五等分に切ってあった。カリカリに焼くためにかなり油を使っていると思うが、5分の1だと脂っこさもあまり気にならない。
飲食店にアドバイスさせていただく際、必ず一つ看板料理を作ってほしいとお願いするが、その大切さを改めて実感した料理だった。新たな年は、私も逆転の発想で乗り切ろう!
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。