前回の続き。誕生日にバースデーケーキでお祝いする習慣が、日本に根付いた要因の二つ目は何か? 答えはそう、冷蔵庫! 高度成長期に普及した「三種の神器」の一つだ。電気冷蔵庫が一般家庭に普及すると、ケーキを買って帰る人が増え、洋菓子店も冷蔵ショーケースを導入するようになったという。従来デコレーションケーキには、消費期限が長いバタークリームが使用されていたが、冷蔵庫の登場で生クリームを使ったケーキの販売も可能になった。
バースデーケーキ発売当初は、フォンダン、つまり糖衣がけの硬いケーキだったようだ。バウムクーヘンをコーティングしているヤツといえば、ご理解いただけるだろう。その後バタークリームのデコレーションが誕生、さらに生クリームとイチゴのデコレーションに進化した。このイチゴのショートケーキ、海外ではJapanese strawberry shortcakeと呼ばれる。つまり、日本式ケーキなのだ。
特徴は、エアリーなスポンジケーキとふんわりホイップクリーム。米国のショートケーキは、食用油脂ショートニングを入れてサクサクな食感にしたビスケット生地に、生クリームとイチゴを載せたモノ。ビスケットはイギリスのスコーンと似て、やや硬め。
諸説あるが、1922(大正11)年に初めてショートケーキを発売したとされる不二家の創業者藤井林右衛門氏が、洋菓子事情視察と技術習得を目的に渡米され、帰国後、硬い生地を、日本人の口に合うやわらかいスポンジケーキにしたのだろうとする説が有力。冷蔵庫と同時期に実用化が進んだハウス栽培により、イチゴの出荷が通年可能になったこともあり、イチゴのショートケーキは不動の人気を誇るように。とろけるようなやわらかさがウケ、逆に海外でも日本式が広まったようだ。
1人分ずつにカットされていないホールケーキを注文する際、サイズは号数で表示されている。ナゼか? それは、昔の尺貫法の名残だとか。ケーキの型は、尺貫法の規格で設計されていたが、メートル法が義務付けられ「寸」が使えなくなり、「号」になったとか。だから、1号が1寸つまり約3センチというワケ。3号ケーキは直径約9センチ、1~2人分といわれる。1号増えるごとに直径は3センチ、目安人数も2人ずつ増える。
最後に、今はやりのバースデーケーキについて。一つ目は、可食シートに可食インクでプリントした写真を飾るタイプ。前回ご紹介したケーキ店「カラフルペア」で初めて知り驚いた。
もう一つはSNSで人気沸騰中のBurn Away Cake。ケーキの天面に火を近づけると、表面のシートが燃えて、中から別の絵が出てくるというサプライズケーキだ。例えば、誕生日にハート印のついたカレンダーをプリントしたシートが燃えると、その下からHappy Birthdayの文字が出てくるといった感じだ。
ショートケーキ発売からおよそ百年。この先もまだ進化し続けるのだろうか。
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。