新型コロナが5類に移行してから初めて迎える年末年始。円安もどこ吹く風で、久しぶりに海外で過ごす人もいるだろう。
わが家では、仕事納めのあとの家族旅行が定番で、昨年は箱根・富士屋ホテルに、今年は方面をかえて日光金谷ホテルを予約した。高齢の親を伴うので自家用車で行ける関東近県がもっぱらで、1年の「旅納め」をする。そして、大みそかに届くおせち料理を都内の実家で受け取って、家族水入らずで、新年を迎える予定だ。
その、おせち料理。今年もまた、「古窯プレミアムおせち三段重」を予約した。購入先は、山形かみのやま温泉「日本の宿 古窯」が運営する古窯公式オンラインショップ。去年、家族にも好評だったことから、今年は9月半ばに注文をしたので早割がきいた。
冷凍ものとは格段に味が違う「冷蔵おせち」を直送してくれるのが特長で、伊勢海老(えび)や鮑(あわび)柔煮など彩も鮮やかに全28種と盛りだくさん。山形牛(生肉)や山形名物「いも煮」は調理済みで、真空パックで送られてくるから新鮮でおいしく、盛り付けもしやすい。重箱容器も立派で見栄えがよく、卓上に華やぎをもたらす。古窯では05年からインターネット直販を開始しており、数量限定で毎年、完売するという。冷凍おせちに慣れた人は、“ナマおせち”をぜひ一度、試してみるとよい。
実は、これまで長年、旅行会社のカタログで、おせち料理を選んできた。日本全国の有名な旅館やホテル、料亭の豪華おせちが、一堂に掲載され、「今回はどれにしようかな」と迷いながら選ぶのも一興で、比較検討がしやすい。
また、箸置きや豆皿が欲しくて、日系航空会社のおせち料理を頼んだこともあった。今年は、マイルアップやオンラインショップで利用できるクーポン券が早割特典に付され、完売も早かった。各社とも、工夫を凝らしているのがうかがえる。
今季のおせち料理のトレンドは、コロナ過とは異なり大人数で食べられるものが人気だそうで、価格もそれなりに張る。子供向けおせちも目につくようになった。時代を反映している。
さて、魚介類や鶏卵など食材の値上げが相次ぎ、縁起物のおせち料理にも変化が表れているようだ。さらに、円安に原油高、梱包資材の高騰、配達員の人件費や光熱費の上昇で、価格転嫁せざるを得ないのも頷ける。仕入れ担当者や板場(厨房)の料理人たちは、きっと四苦八苦の冬を迎えていることだろう。今が師走のかき入れ時。体に気をつけて、年末年始を無事、乗り切ってほしい。
筆者が勤める大学では、秋にインフレ手当が支給されたが、それでも今般の物価高がすさまじくて家計を圧迫する。それに、近ごろ発表された来年度の旅行見本市の出展ブース1コマ当たりの価格が、大幅に値上がりしたから驚いた。例年並みで予算取りをしていたが、これでは到底、間に合わない。それでも訪日外国人に言わせると日本は激安という。何か歯車が狂ってきているように感じる。秋のインボイス制度に始まり、増税の影が忍び寄っているようで、不安な気持ちにさせられる。
そんな世相だからこそ、せめて年末年始だけでも、優雅な宿や豪華おせちで、プチ・リッチな気分に浸りたいのかもしれない。
(淑徳大学 経営学部 観光経営学科 学部長・教授 千葉千枝子)