【地方再生・創生論 261】外国籍の子どもへの日本語教育 松浪健四郎


松浪氏

 世界中に日本人の住む地には、日本人学校や補習校が設置されている。現地の日本人会等が設置者となり、文部科学省が教員を派遣する。日本人は、どの国に暮らしても教育熱心で、日本人としての学校生活を子どもたちに体験させようとする。日本社会は、免許や資格を重視するため、どうしても学校教育を重視する。何よりも、日本語は特殊で難解な言語ゆえ、幼少児からなじませる必要もあろうか。

 日本人の在留者が少数だと、工夫して子どもたちの教育を考える。だが、日本へやって来る外国人、特に発展途上国からの労働者たちは、悲しいかなそれほど教育熱心ではない。先進国からの出身者たちは、アメリカンスクール、カナディアンスクール等の外国人学校に通学させるが、途上国の子どもたちには自国の学校がないために日本の学校に通学させるしかない。そこで、両親も十分に日本語を理解しないので、家庭内では自国語を使用するために日本語の上達が困難となる。

 私にも経験があるが、言語が理解できないとなると、授業が面白くない。禅の修行のようなもので、時間が長く感じ忍耐力が問われる。家庭教師に語学を指導されても、小さいときから言語を身に付けてきた者たちと共に同じ教室での学習は難しい。いくら会話ができようとも、教室での授業は容易でない。私には放課後のスポーツ活動の楽しみがあったので、学校生活はそれほど苦痛ではなかったが、楽しみのない学校へ行きたくなくなるのは当然であろう。

 私たちは、これだけ外国人を受け入れているにもかかわらず、日本語教育について鈍感すぎる。この反省なくして外国人の受け入れは、さまざまな問題を生む。

 文科省の調査結果の発表によれば、外国籍の子どもたちの就学不明は全国で約1・2万人に上るという。しかも、全く就学していない者は600人。これでも前回調査から約9千人も減少したという。この数字は、外国籍の子どもの1割を占める。

 外国籍の子どもには教育を受ける義務がないにつけても、日本で暮らしている限り、通学環境を国や自治体は整備すべきである。法律によって、日本語を国や自治体が指導せねばならないが、努力義務でしかないため、十分に実施している自治体は多くないのが残念である。

 問題は、外国籍の子どもたちが日本語をきちんと理解しない理由で、特別支援学級に入れている自治体が多い点だ。身体に障がいを持つ子どもたちと一緒に授業を受けさせる発想は、ご都合主義でしかなく教育学的には支離滅裂というしかない。それよりも障がい学級に学ぶ生徒たちにも迷惑がかかる。支援学級を自治体は軽々に扱い、外国籍の子どもたちに対しても友好的姿勢を感じないのは悲しい。加えて、進路選択に関しても不利になる可能性をもはらむ。

 外国籍の子どもたちを学校好きにする研究が各自治体にない印象を受ける。国際化時代を本気になって取り組むべし。

 日本語の指導体制をいかに整えるべきか、地方自治体にあっては頭の痛い問題だが、基礎学力を養いつつ楽しい学校を作ってほしい。米国の有力企業の多くは、移民の子どもたちが起業したのだ。フォード、ディズニー等が有名だが、外国籍の子どもたちが大活躍をしてくれるかもしれない。教育の可能性を各自治体の教育委員会が配慮し、本気になって親身に接する必要がある。

 技能実習生が増加する。この人たちにも日本語教育が求められる。言語からの交流が大切で、外国人には日本好きになってもらわねばならない。

 労働力不足は各界に及び、この深刻な問題と外国籍の子どもの教育は深くリンクしている。途上国の人たちは、日本を目指すよりも台湾や韓国に向いていて、日本人気は下落傾向にある。日本語の習得の困難さが嫌われているのだ。丁寧に親切に教えれば、通常の会話に不自由しなくなる。わが国政府、各自治体は外国人に対してそれほど親切とはいいがたい。日本語を教えよう。

 
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