街路樹に外来樹木が使用される。常緑樹が多いようだ。落葉がない、早く大きくなる、虫がつかない、そして強くて安価である。風情があるとはいえ、落葉の処理には金がかかる。しかも毎年のように枝打ちをしなければならない。その最たる樹木はイチョウ。九州ではクスノキがよく植えられているが、街道が立派に見える。日光のごとく歴史的な杉街道もある。広葉樹には、落葉と虫に関係者が泣かされる。
中近東の街路樹には桑やポプラがある。樹木の下方に白ペンキらしき薬剤が塗られ、夜の通行を安全にしてくれるが、あれは虫が上に登らないようにしているのだという。国や地域によっては、樹木の種類が異なるにつけ、一番恐れているのは虫、樹木を枯らしてしまう昆虫がいるのだ。
業者は、地中海周辺諸国からオリーブの古木を輸入している。太い樹を2メートル前後で切り、そこから小枝が繁ってきたところで輸入する。ところが、ギリシアのオリーブは樹木の内側に虫を抱えている場合が多いので、日本の風土にマッチするスペイン産のオリーブを輸入するという。
数年前、樹齢350年のオリーブの古木を日体大が記念樹として2本購入、順調に育ち毎年バケツいっぱいの実をもたらしてくれた。喜んでいたのだが、造園業者は「日本にいない虫がわいて樹を傷めている」といい、全滅させるために骨を折ってくれた。外来種のカミキリ虫だという。強い虫でてこずったという。
それから1年、読売新聞の記事を見て驚いた。外来種で「クビアカツヤカミキリ」という昆虫で、被害は愛知県西部を皮切りに全国に広がりつつあるという記事、日体大のオリーブを襲ったあの虫だ。特にウメ、モモ、サクラなどの木を内側から食べて枯らすらしい。2012年に愛知県で初めて発見されたというから、輸入の際の木材か木枠や木箱にこのカミキリが潜んでいたのだろうか。図鑑によると、黒い体なのだが首が赤い。2018年に政府は特定外来生物に指定し、輸入はもちろん飼育や販売も禁止。
読売新聞の見出しは、「20年後、お花見ピンチ!」と書き、おだやかでない。サクラの被害が深刻で、すでに東京をはじめ首都圏で確認され、近畿地方から四国にまで広がっているという。日本最長の埼玉県の見沼たんぼの桜並木は20キロ、カミキリの猛威によって枯れてしまい、伐採してしまうという心配もある。薬剤を木に注入し、幹にネットを巻いて虫の出入りを防ぐなどの対策を取っている所もあると記事が伝えている。
このカミキリの特徴は繁殖力が強いということだ。樹木の内部に数年間潜み、木の内部を食いちらすというから特殊な虫である。成虫は夏の1カ月しか生きられないが、樹皮に卵を産み繁殖力を発揮する。しかもカミキリの天敵がサクラ、モモ、ウメにいないため、繁殖力が増す。木の内部に潜む特色は、発見も遅らせ、枯れてから気付くようでは手の打ちようもない。モンゴルや中国から入って来たといわれる。
サクラ、モモ、ウメは、どこの地域にも分布しているが、可能な限り早く対策を練っておくべきであろう。とりわけ和歌山県のように、ウメやモモを産する地にあっては、対応を急ぐべきで、自治体の動きが注目される。近畿地方にあっては、すでに大阪、奈良、そして三重でカミキリが確認されているのだ。
首都圏にあっても山梨はモモの産地、心配せねばならない。そこで被害を受けている自治体では、薬剤の散布やネット張りなどをしつつ、特効薬がないために市民の協力を得ているという。館林市(群馬)や足利市(栃木)では報酬を払って退治したり、報告してもらって駆除している。繁殖力が強いだけに産業が大打撃を受けるかもしれない。産地である自治体は、すでに積極的に駆除している自治体と連携し、早めに対策を取る必要がある。
貿易立国の日本にあっては、樹木だけではなく多種類の害虫までもが国内に入ってきている。人体に害をもたらす虫もあれば、樹木に害をもたらす虫もある。政府や自治体の監視が必要だ。