【地方再生・創生論 314】朝鮮学校への補助と無償化 松浪健四郎


 私の小中高と学んだ学校は、在日朝鮮人や被差別部落出身者が多かったが、みんな仲良しで問題はなかった。何の差別もなく、クラブ活動等も共に楽しんだ。そんな環境で育った私は、「差別」ほど許されないものはないと決めつけている。が、一部の人たちは、偏見をもち屁理屈をこねて差別する。国民感情、市民感情を理由に政府は差別を行い、地方自治体もその策を追認中である。

 一度でも差別を受ければ、どれだけ悲しいかが分かる。米国留学時、私は有色人種としての差別を受けた経験がある。ニューヨーク・アスレティック・クラブ(NYAC)のレスラーだった私は、日本人ゆえゲストメンバーで、正式な会員としての待遇を受けることができなかった。会則に「白人だけのクラブ」とあるからだった。米国に黒人の水泳選手の少ないのは、同様のクラブが多いからである。

 わが国の憲法第14条には、「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分または門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と書かれている。「国民」とは、国籍を持つ人だけを指すのではなく、近代国家を構成する人々の集団の一員も指す、と理解するのが一般的であろう。端的に言えば、この国に住み納税の義務を果たしている人たちも広義では国民である。で、その人たちにも行政側はサービスを怠ることなく遂行すべきである。

 しかし、高校の無償化から朝鮮高校が除外されたままである。除外した理由は、「高等学校の課程に類する課程に該当しない」からだといわれる。2013年2月20日、安倍内閣は、北朝鮮系学校を高校無償化制度から除外し、現在も続く。これらの学校や生徒たちを政治的な人質として利用しているかに映る。いや、北朝鮮政府へ「日本政府は在日朝鮮人の子弟を差別しています」、というメッセージを送ったばかりか、敵視を明確にしたにすぎない。おそらく、朝鮮学校内で反日的教育が行われ、民族教育に拘泥していると決めつけたと想像する。その国の歴史や文化も民族教育であり、外国にある日本人学校でもそれらを教えている。朝鮮学校の生徒たちも、学校から一歩外に出れば、日本のルールで生活しているのだ。

 かかる差別を続けている限り、日本と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との関係は好転しない。政治は、「敵」をつくるのではなく、「友」をつくるために機能しなければならない。ましてや、国内最大の政治的課題となっている拉致問題は解決しないと断言できる。「日本政府は、在日の同胞に対して親切で友好的である」と北朝鮮政府が解するメッセージを、なぜ送らないのだろうか。日本政府は、外交を全く理解していないのが残念である。また、全国の各自治体も声を上げないのは、なぜなのだろうか。政府の政策に追随するばかりでは、自治体の自治が泣く。

 政府の文教予算からすれば、朝鮮学校への補助金支給や無償化の金は微々たるものだ。この微々たる金を支出しない背景には、日本政府の器量の矮小さがある。敵に塩を贈ることを武士は知っていた。隣国である北朝鮮と、なぜ友好関係を結ぼうと考えないのか。米国に気がねしているとしたなら、日本国は独立国ではない。だからか、拉致家族の皆さんは、米国を頼りにするのだろうか。

 全国の自治体で声を上げてほしい。朝鮮学校への補助と無償化を行うべきだ、と。北朝鮮の核実験やミサイルの脅威は、友好関係を構築すれば解決する。私たちは、そのためにどんな努力をしただろうか。ひたすら非難するばかりで、ペナルティーを与えるだけとは情けない。

 2020年東京オリンピック、韓国や中国はトルコ開催に投票したが、北朝鮮は東京に投票した。このメッセージを日本政府は無視したままである。北朝鮮政府の人たちも人間で、交流して相互理解を深めれば関係も好転する。それでも行動する政治家は不在、独自路線を歩む自治体もなし。憲法の前文を読んでいただきたいものだ。

 
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