【地方再生・創生論 323】コロナ禍があらゆるものを変えた 松浪健四郎


 私たちは、経験したことのなかった苦しみを味わった。新型コロナウイルスの「パンデミック(世界的流行)」は、国、社会はおろか、私たちの生き方までも変えた。その影響を検証し、コロナ禍を乗り越えなければならなかった。影響は多岐にわたったが、個人の問題だけではなく、国や自治体も関係深い。

 まず、学校教育だ。安倍首相(当時)が、緊急事態宣言よりも早く、全国の小中高校等を一斉休校させた。大学も含めて日本国中の学校が混乱した。が、オンライン授業の導入で、学習用端末がほとんどの児童、生徒、学生に配備することができた。私どもの日体大は、一律5万円を支給してオンライン講義を日常のものとした。しかし、さまざまな学校行事が中止、縮小された。黙食が当然で、コミュニケーション能力の発達に悪影響を与えた。また、不登校の児童・生徒が増加、約25万人に達した。コロナ禍のストレスや長期の学校閉鎖で、生活リズムが狂ってしまったのだ。

 2020年4月、政府は歴史上初の「緊急事態宣言」を発令。国民に不要不急の外出自粛を要請した。小池百合子都知事が、個性的なマスクをつけて、毎日のように訴えた。「密閉、密集、密接」の3密を避けるように、と。「ソーシャルディスタンス(社会的距離)」も叫ばれ、コンビニやスーパーでのレジ待ちまでも注意する。

 この時期、私は大学病院でガン治療を受けていたが、面会中止。あらゆる対面活動が制限され、オンラインが一般的となった。冠婚葬祭も規模の縮小や延期、中止となり、人と人の関係が断絶状態に陥った。

 コロナ禍の招来させた先行きの不安、若者たちは結婚せず、少子化に拍車をかけた。婚姻数は減少、出生者数は80万人を割り込んだ(22年)。この少子化は、社会不安を大きくするため、政府は大胆な政策を打とうとしている。自治体にあっても、少子化を防ぐ政策が重視されるようになり、新しい取り組みが求められている。まず、結婚してもらえるように若者に対して魅力的な政策が必要となっている。結婚相談のために自治体も協力する時代に突入しているかに映る。

 学校、企業、官庁は在宅勤務やリモートワークを急加速させた。都市部では、テレワークが浸透、オフィスのあり方を変えた。

 また、人との接触を避ける流れから、現金の使用よりもキャッシュレス決済が日常のものとなった。レストランや居酒屋には、まだまだ以前のようなにぎわいはないが、外国人観光客は戻りつつある。インバウンドがコロナ禍以前に戻り、観光立国策が軌道に乗れば、地方経済も少しは元気を回復させることができようか。

 スポーツ界も声出し応援が可能となり、プロ野球もサッカー、バスケットボール界も元に戻りつつある。国民に娯楽を与えることは大切であり、社会を活性化させる。文化面においても多大な影響が出て、エンターテイメントの分野も落ち込んだ。回復傾向にあるものの、人々の生活様式が変化してしまったため、急には戻らない。コロナ禍によって、人の動きや考えが変化して、あらゆるものが新しい時代に突入しているといえる。

 自治体は、ワクチン接種をはじめ、初めての広報やさまざまな仕事に追われた。コロナウイルスが、季節性インフルエンザと同じ扱いを受ける「5類」となった。だが、高齢者や免疫力の弱い人たちにとっては、まだまだ感染に気を配らねばならない。そのために各自治体は、地味な作業を住民のために行わねばならない。保健所と連絡を密にして取り組む必要がある。

 不登校の児童、生徒に対しては、教育委員会は対応策を講じてほしい。大学教育が、対面とオンラインの併用であるハイブリッド型が主流になっている。小中学校でも無理やり登校させずに、ハイブリッド型の授業を行うようにするなり工夫してほしい。学校を嫌いになった理由は何なのか、私たちもコロナ禍に負けず、子どもたちを学校に戻す努力をせねばならない。

 
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