【地方再生・創生論 326】オーバーツーリズムの緩和へ 松浪健四郎


 京都・清水寺の高僧が私に嘆かれた。「硬い女性のハイヒールのせいで木製の床がデコボコになってしまいました」と。訪日観光客(インバウンド)が増加した面もあるが、日本人旅行者も床にダメージを与えているという。

 かかる苦情だけではなく、各種のトラブルが顕在化してきている。観光公害「オーバーツーリズム」の発生である。政府は観光立国を標榜(ひょうぼう)し、今年の訪日客をコロナ禍以前を見込んだが。

 観光庁が主要観光地をもつ地方自治体に、オーバーツーリズムについて調査した。インバウンドの急増もさることながら、マイカーで家族旅行を楽しむ日本人も増加しているため、さまざまな観光公害が発生していて各自治体は困っているのだ。住民の生活が脅かされるようでは、迷惑な観光立国となろう。特に昨今、簡単に写真を撮ることができるため観光客が公道上にあふれる。危険も迷惑も顧みない非常識な観光客、これでは自治体は頭を抱えるしかない。

 観光地は、一時的なものではない。名所や名跡には、日常的に観光客が訪れる。その持続可能な観光地にするためには、現在のオーバーツーリズムを把握し改善策を講じる必要がある。住民の苦情が続きつつ、野放しにしておけば将来に禍根を残す。行政と住民が一体となって観光地を守り抜かねばならない。

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