【地方再生・創生論 330】子どもの権利保護へ本気で行動を 松浪健四郎


 新聞を読んでいると、信じがたいニュースに心を痛める。母親一家で6歳の子どもを殺すなんて、あまりにも残酷すぎるではないか。どんな家庭事情があろうとも、子どもを育てる義務がある。人間としての「愛」を感じないのは、つらすぎる。ましてや少子化時代、一人でも多く子どもが欲しい時代にあって、家族で殺すなんて動物でもしない非常、悲しすぎる。

 政府は2023年6月中旬、「こども未来戦略方針」を閣議決定した。次元の異なる少子化対策と経済成長実現との両立を図り、子育て世代の所得を伸ばし、少子化対策に危機感をもちながら対応するという決意が伝わってくる。

 少子化防止は異次元の政策であろうが、なかろうが、政府は本気になって取り組む必要がある。毎年、150万人以上の日本人が死亡する。そして生まれるのは80万人弱、これでは和歌山県や鳥取県、島根県の人口が減少することになる。人口問題は、社会保障のみならず、日本経済のための労働力不足を物語る。

 ともかく子どもが大切なのだ。2023年4月に「子ども家庭庁」が発足した。子どもの権利を守る国や自治体の責務を定めた「子ども基本法」が同時に施行された。自治体の取り組みを加速させねばならなくなってきた。

 子どもの権利保護のため、各自治体は本気で行動してほしいと強く望む。冒頭に記述した子どもの悲劇は、大人が子どもの権利保護を理解していない一例であったが、残念ながら、日本にあっては、子ども条例等の制定がそれほど進んでいない。おそらく、1989年に国連で「子どもの権利条約」が採択され、日本も94年に批准した内容が十分に伝わっていないのかもしれない。

 権利条約は、まず、「子どもの生きる権利」をうたう。しかも健やかに生きることができるようにしなければならない。次に「守られる権利」である。差別や暴力などから私たちは子どもを守る義務がある。第3は「育つ権利」である。教育を受け、その子らしく成長させねばならないのだ。第4は、「参加する権利」だ。子どもとはいえ社会の一員として意見を表明できるようにする。この4本柱が国連の「子どもの権利条約」の骨子といえる。この条約の理念は、わが国の社会では少しなじめないかもしれぬが、理解を深めて「子ども条例」を制定するために自治体は取り組まねばならない。すでに60を超す自治体は制定済み。

 各自治体の条例は、いじめや虐待などの相談を受け、解決させるために第三者機関の設置を行うと同時に、「子ども会議」なども発足させている。かかる子どもの権利保護のための「子ども条例」が制定されると、住民の子どもに対する意識も変化する。また、自治体も少子化打破となる重要な施策として捉えるようになろうか。「子ども家庭庁」が設置され、「子ども基本法」の施行により、2023年は国および自治体は「子ども」について真正面から取り組み、少子化対策の一助とせねばならなくなった。

 私たちが若かった時代、この国には「子宝」という言葉があった。結婚式は両家で盛大に行い、多くの人たちが祝った。妊娠、出産も大きな祝い事であった。が、結婚が自由恋愛のケースが増えると、伝統文化的な行事が省略されるようになり、やがて少子化時代を迎える。文化が異質に転じて日本の習慣も変化したのである。

 法律や条令を制定して、子どもを守り抜かねばならなくなった日本社会、間違いなく私たちの社会は劣化しているのだと認識させられる。「子ども家庭庁」の発足式で岸田文雄総理は、次のように述べられた。「子どもたちにとって何が最も良いことなのかを常に考えて、皆さんが健やかで幸せに成長できるような社会、”子どもまんなか社会”の実現が、『子ども家庭庁』の使命です」とあいさつされたと記事にあった。こんな役所も必要になるほど、私たちの社会は変化したのだ。私は、喜ぶよりも反対に悲しむ。日本人の堕落だ、と。

 

 
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