【地方再生・創生論 341】外国人技能実習生に見捨てられる前に 松浪健四郎


 もう30年にもなる技能実習制度が、転機を迎えている感じがする。人手不足から外国人労働者を受け入れてきたが、日本側にも多様な問題があって、政府の有識者会議はこの制度の存廃をも含めて議論している。賃金の不払い、暴力、長時間の労働等に技能実習生たちはへきえきしている一面もある。日本の受け入れ側は、転職が制限されているに加え、在留期間が限定されていて帰国させやすい理由で技能実習生の労働力に依存してきた。

 ところが、実習生の失踪や人権問題もあり、この制度のあり方が問われている。技能実習生を受け入れる監理団体があって、きちんと機能しておればともかく、機能していないがために実習生が泣かされる。監理団体が、企業側に味方して実習生を軽く扱う一面もあり、この団体の活動にこそメスを入れる必要がある。

 日本が魅力的な国でなくなり、台湾や韓国での就労を希望する外国人が増加しているのだから、監理団体の役員や関係者は危機意識をもたねばならない状況下にある。職場に外国人を迎えるとなると、彼らの負担が軽くなるように配慮せねばならない。日本語を数カ月間しか学んでおらず、十分な会話能力の不足を理解し、愛情をもって日々接する人間性が求められる。「奴隷制度」と錯覚している受け入れ先があるため、せっかくのこの制度に疑問符がつけられるのだ。

 先進国にあっては、第1次産業でどうしても労働力不足に陥る。アメリカの農業が、いかに機械化されているとはいえ、果実や野菜栽培には人手がいる。おおむね季節労働だけに、労働力の確保が難しい。留学生時代、私たちもアルバイトで野菜づくりやサクランボ取りを行った。南米からの移民らしき人たちと共に働いたが、十分な賃金とは思えなかった記憶がある。

 わが国も1次産業分野の労働力不足を技能実習生制度で今後も補うことができるのか、他に手段や方法がないのか研究せねばならない。また、IT分野をはじめ高度な技術を必要とする分野にもイノベーションのために外国人労働者が求められている。もはや、日本は少子高齢化に伴って外国人と共存せねば成り立たない国へと転じている。優秀な外国人労働者も必要であり、単純な作業に従事する外国人だけでは困るというホンネが技能実習制度の廃止論者に散見する。

 技能実習制度は、技能を手につけるために転職が制限されている。そこで2019年に特定技能制度が新設された。転職が認められてはいるが、5年しか滞在できず、家族も呼ぶことができない。全国の自治体の願いは、短期滞在ではなく長期間住んでほしいということだ。でないと、自治体は外国人を把握するのに問題が生じる。

 労働力にとどまらず、いかにして人口を増加させるかを考える自治体にとって、短期滞在ではメリットがない。が、外国人の受け入れは、労働力問題だけではなく社会の大きな問題であるのに、政府は出入国管理の問題であると決めつけている。どんな状態であれ、人口を増加させたい自治体は外国人であるなしを問わない。先日、石川県の馳浩知事と会談した。石川県人でなくとも関係ある人たちの人口も増やしたいと語っていた。例えば、お産のために故郷に帰って出産した子どもにも手当を出すという。関係人口の増加も大切であると語られた。

 ともあれ、わが国は外国人労働者なくして経済が成り立たない。親切にせず、劣悪な環境で住まわせたり、働かせたりしていては、日本は見捨てられてしまう。実習生たちが、高額の手数料を払って来日している現在、雇用企業も一部負担を考慮すべきであろう。

 アジア諸国は、ILO条約に批准しておらず、手数料徴収を認めている国もある。ベトナムがその例であるが、「働かせてやる」「日本へ行かせてやる」という優越性をもって技能実習生を訪日させていては、やがて労働力不足に泣かされる。国は本気になって、一歩進めて「移民政策」を考える時代を迎えてはいまいか。

 
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