接客研修での話。接客係に名刺を持たせて、顧客に渡させたいという提案があった。真意は「お客さまに名刺を渡すことで名前を憶えてもらい次回来館時の指名につなげる。さらに、接客係のモチベーション向上を図る」というもの。
いまのところお客さまアンケートに名前をあげて褒められたり、再訪時に指名されたりするのは一部の接客係だけである。
指名された係はより良いサービスを提供するよう努め、高評価を得ようと自身の振る舞いにも気を配る。なぜなら、顧客の評価が高い接客係は係が顧客を見るのと同じくらいの注意深さで顧客も自身を観察していることを知っているからである。
顧客から指名されない接客係は、お客さまを見ることには一生懸命だが、お客さまから見られていることへの意識は案外、希薄だ。たとえば、絶妙なタイミングで追加飲料を聞いたとしても、その飲料を提供する際に、空いたグラスを下げずに置きっぱなしにしていたり、ドリンクをぞんざいに置いたりしては、一連の動作を注視していた顧客は一気に興醒めとなる。
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