連載がリニューアルしてタイトルも一新しました。「ちょっと よろしいですか」とは、観光促進に関する会議で、ぜひ、申し上げたいことがあるときに手を挙げて言うのが私の決まり文句。本連載も、読者である旅館さんホテルさん、観光業に携わる方々に、私の経験をお役に立ててほしいという気持ちで、皆さんにお話しさせていただくような文体でつづっておりますので、このようなタイトルにしてもらいました。
本紙でも本白根山噴火による草津温泉への影響が掲載されてきました。遅ればせながら、私も先日、草津温泉に行ってきました。8月の土曜日の正午でしたが、いつも人でごった返す湯畑周辺が閑散としている印象は否めませんでした。ただ混雑していない湯畑周辺は写真も撮りやすかったし、お土産物屋さんもゆっくりと見て回れました。
定宿にしている奈良屋さんを訪ねると、支配人の石和さんが「噴火のことはニュースで知りました。草津温泉からは本白根山は見えませんからね」とお話し下さいました。早速、石和さんに現在までの草津温泉としての動きを聞きました。
噴火の翌日に、黒岩信忠町長が「草津本白根山の噴火について」と題し、噴火警戒レベル3であるが本白根山から草津温泉までは5キロ以上離れており、温泉街は危険が及ぶ位置にない。噴火は蒸気噴火であり、マグマが温泉街に到達するようなこともない。草津町は情報収集を行いサイエンスの視点から対応しておりますので、安心して草津温泉にお越しください、と文書で発表しました。この内容を英語、中国語、韓国語でも表明。町役場、観光協会、旅館組合で発信する情報を統一するようにしました。6月15日にも「安全宣言~草津温泉の今~」として黒岩町長が声明を出しました。
「事実は事実として受け止め、包み隠さず事実だけの情報を公表したのが良かったのだと思っております。そうすることで、別府温泉さんからの『別府の恩返し』といったご厚意をはじめ、応援してくれる方が出てきてくださいました」(石和支配人)。
いち早く声をあげたのが楽天やじゃらんのオンライン予約サイトだそうです。「クーポンを付けて、草津応援企画を実施してくれたのは本当にうれしかった」と石和さんが表情をほころばせました。それでも、通常のようにツアー企画旅行が催行されないこともあり、夏休みの繁忙期でも3割減、「コンビニやガソリンスタンドはもっと多くの痛手を負っていると思います。それでもピンチはチャンスです」とおっしゃっていた石和支配人の言葉が忘れられません。
自然災害によって観光客の波が引くことがないように、観光地を訪ねることが応援になり、風評被害を防ぐ意味もあると伝えることが、私の仕事であり使命なのだ。そう再確認する草津滞在でした(“ピンチをチャンス”に変えた具体的な策は次回)。
(温泉エッセイスト)