VJ大使のお仲間に沖縄ツーリストの東良和大使がいます。沖縄で最大規模の旅行会社である沖縄ツーリスト(OTS)の2代目で、現在は会長職で会社を率います。
東大使は「オーバーツーリズムにおけるさまざまな事態は、“成長痛”と言えるもの」とおっしゃいます。
先日、那覇にある沖縄ツーリストさんを訪ねました。事務所のすぐ横には、臨空豊崎営業所があり、ここでレンタカーを貸し出します。ここから15分の空港まではOTSのバスでの送迎があります。バスから降りてくる人も、乗る人も、多くはアジア圏の外国人。大荷物を持っています。
OTSさんは、2018年は48万人もの外国人に利用され、その8割がレンタカーを利用されたそうです。現在、貸し出す車両は全車3年以内の新車を2300保有しているそうです。
OTSさんは08年に台湾の台北でレンタカー予約センターを開設し、レンタカー予約受付業務を開始しました。
それから数年後、13年頃には、台湾から沖縄に旅行に来るお客さんが沖縄滞在中のレンタカーを日本語のウェブサイトから予約してくるようになってきたそうです。そこで、多言語に対応する申し込みウェブサイトを開設しました。その後、15年にはホテル予約サイト、17年にはアクティビティ予約サイトをオープンさせました。
これがきっかけとなり、これまでOTSさんは外国人観光客のランドオペレーターとしての業務がメインでしたが、オンライン事業での展開を始めます。
東大使は「メガOTAに対して、うちはローカルOTAですから」と力強くおっしゃいます。
世界の予約サイトに比べれば規模は決して大きくはない。けれどローカルだからこそ、細やかな対応ができるということです。
その対応力の一環として、OTSさんは大同火災海上保険と共に、独自の保険商品「One Two Support 訪日旅行保険」を開発しました。
この保険はレンタカーでの事故や滞在中の病気やけがを補償するもの。医療費の立て替えの払いの必要がなく、キャッシュレスで受診ができます。また受診する際の手配や医療通訳のサービスも受けることができます。
加えて、レンタカー1台の保険料ですから、運転手だけでなく同乗した人も補償対象となります。
保険料は1日2160円。最大30日間利用できます。
この利用者のメリットを最大限に考えられた商品は、19年2月1日にスタートし、5月末の時点で1万件の加入があったそうです。
訪日外国人のためでもありますが、医療費の未払いや言葉の問題で困る地元の医療関係者にも喜ばれている商品です。まさに沖縄にたくさんの外国人が訪れるようになったからこそ誕生した、“成長痛”が生み出した新しい保険。「ローカルOTA」だから可能となる細やかさです。
「うちはお客さまに喜んでいただけるのが、本当にうれしい社員が多いんです。この前、お客さまが迷子になったからって、社員総出で探しました」とほほ笑むスタッフさんの優し気な表情が忘れられません。こうした気持ちのある対応こそが、日本に対して好印象を与えるのだろうなと、ほっとしつつ、うれしくなります。
(温泉エッセイスト)