本連載でもたびたび触れてきましたが、昨年の12月に新刊を出しました。
「バリアフリー温泉で家族旅行」シリーズ第3弾の「行ってみようよ! 親孝行温泉」(昭文社)です。
これまでは一言で伝わりやすいという理由で「バリアフリー温泉」という私の造語を使ってきましたが、本書は「親孝行温泉」という言葉をメインタイトルにしました。
建物のフルフラットな形状を意味する「バリアフリー」よりも、「親孝行温泉」の方が多くの方に感情移入してもらいやすいかなと考えたからです。「親孝行温泉」は私の思いつきのネーミングです。
以前に、私自身の親孝行温泉の旅の様子をSNSでアップしましたら、多くの方から共感されたコメントをいただけましたので、それがヒントになりました。
また本書は観光庁の加藤進審議官より「少子高齢化社会に突入したわが国にとって観光は成長戦略の柱です。誰もが安心して旅行を楽しめる環境が整備され、『旅の力』で日本が元気になることを期待します」と、帯へのお言葉を頂戴しました。加藤進審議官には深く感謝を申し上げます。
宿泊産業のバリアフリー化は間違いなく、求められています。先駆けで取り組んだ宿の皆さんからは、「バリアフリールームが最も稼働率が高い」とよく聞きます。事実、三世代、四世代の家族旅行に利用されています。バリアフリールームを中心に周りの2~3部屋を予約して、お爺(じい)ちゃんお婆(ばあ)ちゃんの古希や米寿のお祝いを、孫たちと一緒に温泉旅館で過ごすというスタイルを私もよく見かけます。これからさらに一般的になっていくでしょう。
では、宿泊施設のバリアフリー化の際に気を付けるべきことは何か―。
まずバリアフリールームには十分な広さが求められます。車いすを利用するお客さんにとって、客室内で移動しやすいようにという理由です。シンプルな車いす、または大型の電動車いすが自在に動けるように、客室の入り口や部屋にあるドア幅は80センチ以上あると安心です。
多くの宿は改修する際に、従来の2部屋を1部屋にまとめ、広さを確保して、特別室として販売します。宿泊代は少々、高めですが、お客さんの「せっかくの記念日だから特別室を利用する」という声が多いのも確かです。
温泉旅館に宿泊するのですから、どんな体の状態の方でも、ぜひ、温泉でくつろいでいただきたい。その点は、「入浴介助機器 リフト付きのお風呂」があると喜ばれるでしょう。入浴する人も、サポートする家族も楽に入浴できるからです。外部の会社に入浴介助を頼める環境を作ることも、一つのやり方でもあります。
「行ってみようよ! 親孝行温泉」は、これから宿泊施設のバリアフリー化を予定している方にも参考にしていただけるような内容にしてありますので、ぜひ、お手に取ってみてください。
最近、旧知の旅館オーナーさんから「バリアフリールームを作りたいから相談に乗ってほしい」と連絡をいただくことが増えました。
温泉旅館、温泉地、観光地におけるバリアフリーやユニバーサルデザインに関する疑問やプラン内容も、お気軽にご相談くださいね。アドバイスさせていただきます。
(温泉エッセイスト)