このところコロナ禍における観光地や旅館の在り方、また衛生管理対策を取材して、一般の人には「安心して楽しめる旅館」を発信し、業界向けには「対策の好事例」を伝える仕事がメインになっています。
先月は、ウィズコロナ時代の自治体や観光地域の先進的な取り組みを紹介する「iJAMP自治体実務Webセミナー」(時事通信主催)で、「明日の観光を考える~コロナ禍にこそ、この取り組みを~」という演題で30分ほど話しています。現在公開中でフリーでご覧になっていただけます。
また、今月は京都府宮津市役所からのご依頼で、宮津市の飲食店や宿泊業の方に向けて「旅館の3密回避対策好事例」を話しました。
こうしたテーマで取材して発信する中で、改めて思うこと。それは、コロナのフェーズが刻々と変わる難しさです。緊急事態宣言が発令されていた4、5月、一時的に状況が少し落ち着いた6月、また感染者が増えてきた7、8月での変化。
また、人によってもコロナに対する温度差があること。どんな状況下でも日常的に会食をする人もいれば、3密回避や手洗いはもちろんのこと、外出から帰宅すれば必ずシャワーを浴び、洋服は全て洗濯という人もいます。安全基準が異なる難しさをこのコロナ禍に感じています。
先日取材で宿泊した宿では徹底した3密回避対策が成されていました。ただマスクをして、一定の距離も十分に取られていましたが、料理を目の前に口頭で料理説明をされたことが、私は少し気になりました。
この翌日に宮津で講演の仕事があり、その直前には極力、人との接触は避けたい私にとって、その料理説明は口頭ではなく、紙で示してくれたらと思ったのです。もしこのときの宿泊が個人的な夏休みだったら、その口頭での説明はなんの気にもならなかったでしょう。
同じ人間でも、その日の状況で求める接遇が異なるのだと実感しました。
このときに「選べる接遇」というアイデアが思い浮かびました。
例えば、「館内や食事の説明が書かれた紙をお客さんに渡す」。「説明はスタッフがする」。どちらの接遇がいいか、お客さんの希望を予約の際かチェックインのときに選べるようにするのです。
先日、開催された「運輸政策セミナー NEXTインバウンドシリーズ vol.1」で、「それでも私たちは進む『インバウンド観光 新マーケティング5.0 戦略』」と題して、Visit Japan大使・関西国際大学経営学部経営学科教授の李容淑さんが話されました。示唆に富む李大使の講演は素晴らしく、勇気をいただきました。中でも「いまは観光PRをするタイミングではない。安心安全をPRする安全観光のとき」という言葉には、私も強く同意しました。
いま観光の現場は試行錯誤しています。対策として完璧な正解はなく、少しでもベターな対策を手探り中だと思います。「選べる接遇」も、そのうちの一つになるかもしれません。
ここで改めて皆さんにお伝えしたいのは、いま必要なのは、3密回避対策や衛生管理対策を積極的に表明(発信)することです。観光地や旅館がそれぞれ工夫している対策は、いわば各地の個性とも言えますし、それが今後のイメージにもつながるはずです。
観光地、旅館、飲食店の新しいスタイルを共に作りましょう!
(温泉エッセイスト)