地方都市を結ぶ長距離、夜行路線は、一言で言えば、「ブルートレインの代替として成長したが、新幹線延伸や航空自由化により、その役割は限定的なものになった」のである。
各事業者は、まず、その環境変化を冷静に認識する必要がある。なお、地方向け長距離、夜行路線は、高速バス全体の数%しか占めない。成長基調にある他の路線と意識を切り替えることが重要だ。
高速バスは長らく、路線の両端の地区で以前から路線バス事業を営んでいる会社同士の共同運行という形でなければ事業免許が下りなかった。従って、大都市側事業者によって、例えば京浜急行であれば品川、西武であれば池袋という風に発着地が固定されがちだ。
一方で、地方側では路線バスの事業エリアごとに別々の路線が成立することになる。その結果、同じ東京都―青森県の路線でも、「品川・浜松町―弘前」「新宿・東京駅―青森」「東京駅・池袋―八戸」がそれぞれ別々の路線として成立している。
また、高速道路網が充実した今も、上記の事情から路線の組み換えがうまくいかず、一般道しかなかった当時の効率が悪いルートを走行する路線もある。
需要が縮小すると同時に、事業免許制度上の制約も小さくなっている。これらの路線を整理統合し、大都市側では複数のターミナル駅を経由しつつ、地方側では県境などをまたぎ複数都市を串刺しにして停車することで、運行効率化を図ることが重要だ。
夜行運行の場合、利用者の利便性という観点でも、また運行コスト(人件費など)という観点でも、経由地が多少増えて所要時間が伸びても、それほど問題とはならない。もちろん、各事業者それぞれの立場があり簡単な作業ではないが、これを乗り切らねば路線を維持することはできないだろう。
さらに2013年から完全施行された「新高速乗合バス制度」では、もっと大きなチャレンジが可能となった。次回、その点を説明する。
(高速バスマーケティング研究所代表)