全体から見れば限られるが、大都市から鉄道の直通サービスがなく高速バスがメインの輸送モードとされる路線では、それでも、個人観光客の利用は少なくない。そのような路線では、インターチェンジ併設の高速バスターミナルや道の駅などに設置された高速バス停留所で、他の輸送モードとの結節が行われている例もある。
例えば、東名高速道路御殿場インター内や周辺の高速バス停留所へは、東京駅や新宿、横浜などから高速バスが頻発しているうえ、「御殿場プレミアム・アウトレット」や総合レジャー施設「御殿場高原時之栖」への無料送迎バス、箱根(湯本、強羅)や富士サファリパーク方面への路線バスに乗り継ぐことができる。
これらアウトレットモールは2019年に増床とホテルの開業が予定されていることから、御殿場地区の拠点性は高まると考えられる。
地方立地の大型温泉旅館が首都圏などから比較的長距離の無料送迎バスを運行する事例も増えたが、14年から導入された貸し切りバスの新運賃・料金制度によって貸し切りバス運賃(チャーター代)は値上がりしており、宿泊施設のコスト負担は重くなっている。
今後、貸し切りバスを借り上げ無料送迎として運行するのをやめ、高速バスの一部座席を宿泊施設が買い取ったうえ、最寄りの停留所と宿の間で送迎バスを運行する、ということも考えられる。
各地で少しずつ事例が見られ始めた体験型などの着地型ツアーも、このような高速バスターミナルや道の駅を集合場所として活用すれば、公共交通(高速バス)で訪れる旅行者も、自家用車などで訪れる旅行者も、両方が便利に使えるはずだ。
旅行の個人化が進み貸し切りバスの需要が縮小する中、本来ならその代わりに高速バスが担う役割を現状では引き受けられていないという点に、筆者としては悔しい気持ちがある。「地元の人の都市への足」としての利用が極めて安定しており、また高速バス同士の競合がほとんどないゆえ、新しい市場へのアプローチが遅れているのだ。高速バスターミナルのあり方についても、新しい挑戦をする事業者が現れることを期待している。
(高速バスマーケティング研究所代表)