それでは、これらの課題にどのように対処すべきであろうか。
まず、前回に要因1で示したように、慢性的な人手不足の状態にあるのは、この国のほとんどの業界で共通である。各業界ともに、その解決に向けて工夫を重ねている。
生産年齢人口が構造的に不足する中で、多くの業界が新しい働き手として期待するのが「シニア」「外国人」「女性」「若年層」である。
そのうち「シニア」について、大手バス事業者において、正社員を定年退職後に嘱託社員として再雇用し、車両サイズが小さいコミュニティーバスや企業などの送迎バスの運転を担当させるという動きはずいぶん以前から定着している。
一方、健康起因事故(乗務員が運転中に病気を発症したことで発生する事故)の懸念もあり、高齢の乗務員を、高速バスや貸切バスの第一線に投入しづらい。
「ある年齢を超えたら小さいバス」というキャリアパスができ上がっており、より積極的に「シニア」の活用を進めることは重要だとしても、構造的な乗務員不足の解消にはつながらないだろう。
「外国人」については、多くの業界で活用が期待され、受け入れを拡大する政策も続いている。その中には建設業など危険を伴う現場や、看護や介護などサービス対象者の生命に関わる現場もあり、「外国人だから無理」という職業は存在しないように思われる。
ただし、バス乗務員については、チームではなく1人でサービスを提供する点がそれらの現場と異なる点である。万一の大事故や災害の際、乗務員1人で緊急通報や乗客の安全確保、避難誘導を迫られるケースが想定され、相応の日本語でのコミュニケーション能力が求められる。
バス乗務員の分野でも外国人を積極的に受け入れるための研究は重要だが、緊急時の対応のあり方が大きなハードルとして残っており、バス乗務員を今すぐに外国人人材受け入れの対象とすることは簡単ではないだろう。
残るは「女性」と「若年層」の活用である。
(高速バスマーケティング研究所代表)