ここまで、大都市や地方中核都市など都市部におけるバスターミナルの事例や課題を見てきた。ただ、以前にもご紹介した通り、わが国の高速バスは「地方の人の都市への足」として成長、定着している。
そして地方部では、「一家に1台ではなく1人に1台」ともいわれるような自家用車の普及を受け、高速バスのパークアンドライドが定着している。
従って、地方部では、高速道路の本線上の停留所やインターチェンジの周辺に、パークアンドライド用の広大な駐車場が広がっている例が多い。例えば、徳島県北東部の松茂町は、徳島市から高速道路(明石海峡大橋など)を使って京阪神へと向かう際に必ず通過する位置にある。
そこで2002年に、国土交通省と徳島県が主体となって、国道のバイパス沿いに「バスの駅」という位置づけで「徳島とくとくターミナル」が設置された。土産物の販売店などもあり、「道の駅」のような施設である。
その際、徳島県が200台規模の有料駐車場を開設したが、繁忙日にはすぐに満車となったため、周辺では民間のコインパーキングが続々と営業を始めた。すべてを合計すると、おそらく千台規模になるはずである。
従来、市街地にあった高速バスターミナルの機能が、そのような郊外に移る事例も現われ始めた。山形県庄内地方の鶴岡市のバスターミナルといえば、JR鶴岡駅前に立地する「Sモール(旧・庄交モール)バスターミナル」であった。
しかし、山形自動車道鶴岡インターの目の前にある「庄内観光物産館」内に新しい高速バス待合施設が設置され、駐車場内の約290台分が高速バス乗客用に確保されている。鶴岡発着の高速バスの一部は、Sモール発着をやめ、インターチェンジに併設された観光物産館発着に改められている。
他にも、岡山市や高松市、高知市といった県庁所在地クラスから、長野県飯田市のような中小都市、さらに、千葉県木更津市のような郊外の衛星都市まで数多くの都市で、インターチェンジに隣接して高速バスターミナル機能が新設されている。
(高速バスマーケティング研究所代表)