今日、人口動態の変化によりこの国の多くの業界が極度の人手不足に陥っており、その解消のため「若年層」「女性」「外国人」「シニア」の活用に熱心に取り組んでいる。バス乗務員の場合は、特に「若年層」と「女性」が中心となる旨は以前にご説明した。
このうち「若年層」については、バス乗務員に必要な大型2種運転免許が、早くても21歳にならないと取得できない点がボトルネックだとされてきた。高校新卒者を採用しても即戦力として活用できないし、会社が負担して乗務員養成を行っても、鉄道などと比べ業界内の転職が容易なことから他社に流出してしまうリスクが大きい。
確かにそれらは事実なのだが、業界全体がそのことを言い訳にしてしまっているのではないか。
1990年代半ばまでバス乗務員の待遇は極めて恵まれていたし、その後は待遇が下がる傾向にあったものの、長く続いた経済不順の中で「手に職がつく」として安定した数の応募が続いたことから、「若年層をバス乗務員として取り込むための仕組み」づくりが不十分だったのではないか。それは、個別の事業者としても、業界全体としても、である。
例えば、高校卒業者を対象とした専門学校などにおいて、バス乗務員を育成するようなコースを作るよう業界として努力をしておくべきではなかったか。現に、観光産業(宿泊業や旅行業など)へ人材を輩出する専門学校は多数ある。
多くのカリキュラムをそれらと共有し、旅行取扱管理者など関連する資格や接客スキル、初歩的な英会話などを学びつつ、大型2種免許と運行管理者資格を取得して21歳を超えて卒業するような学校があれば、バス事業者は即戦力を手に入れることができる。
さらに、そこまでの教育費用は本人(実際には保護者)が負担するので、事業者の養成費負担は低下する。本人は、高校からそのまま進学、就職とつながるので、わが国の社会で嫌われがちなキャリアの空白は生まれないし、専門学校などの卒業資格も手に入る。
(高速バスマーケティング研究所代表)