バス乗務員に対する人事評価制度は、都市部の大手乗合バス事業者らによって1990年代半ばから確立が始まった。2000年以降は大手事業者の多くで導入されるようになった。
それ以前は、勤続年数などの年功的要素を中心に、一部の事業者では営業所長や運行管理者による主観的な評価が導入されていた。しかし、「乗客(添乗)モニター制度」の導入や勤怠の点数化など、客観的な評価が行われるようになった点が大きな変化である。
「モニター制度」とは、定期券を保有しているなど日常的に路線バスを利用している乗客から希望者を募り、実際にバスに乗車した際の乗務員の接客態度、安全運行意識などをチェックし報告を依頼するものである。
簡単な報告書の提出(最近はウェブ上で報告を行う事業者も増えている)を求める事業者から、詳細なチェックリストを作成し、相当な数の項目についてチェックを依頼している事業者まで、内容はさまざまである。前者であれば図書カードなどの謝礼程度、後者であれば時給制のアルバイトということになる。
熱心な事業者においては、チェック内容は極めて詳細である。
接客面では、制服、制帽の着用状況から始まり、乗降時の乗客への声がけ、マイクアナウンスの有無(音声合成装置による自動放送とは別に、発進時、急停車時、踏切通過時などにそれぞれマニュアル通りのアナウンスを行っているかどうか)など。
安全運行面では、右左折時の一旦停止または最徐行(特に左折時に一旦停止すべきかどうかは事業者によって判断が分かれる)、指差喚呼(信号機やバックミラーなどを指で指しながら安全を確認すること)の履行状況に加え、「信号待ちの際に前の車両と何メートル以上開けて停車しているか」といった点までチェックする事業者もある。
添乗モニターは私服で乗車するから、乗務員からは一般の乗客と区別がつかない。また、品質調査を専門とする調査会社に依頼し、定期的にプロの調査員(ミステリーショッパー)による添乗調査を行っている事業者もある。
(高速バスマーケティング研究所代表)