【岐路 バスと観光 新たな関係 132】どう解決 乗務員不足29 高速バスマーケティング研究所代表 成定竜一


 必ずしもバス事業者に限った話ではないが、レガシーな日本企業における組織の特徴として、現場のオペレーションに対するマネジメント側の無関心という問題がある。「現場の自主性を尊重」といえば聞こえはいいが、本質は「丸投げ」である。

 「細かいことは現場に任せるから。自分たちが働きやすいよう工夫すればいい」と、マネジメント側は言う。現場の側も職人意識が強く、マネジメントの干渉を嫌うと同時に仕事の結果には完璧を求める。その結果、組織図に書かれている以上の権限が実質的に現場に移譲され、それぞれの現場でローカルルールが確立する。

 第1線のメンバーはみな、潔癖なまでに、そのローカルルールから逸脱しないことを美学としてオペレーションを遂行する。マネジメント側が用意する業務マニュアルには理念だけが文字化されており、具体的な業務手順は、現場メンバー同士だけで通じる「現場語」によって共有されている。

 そのような、日本企業の「現場文化」が、日本企業の製品やサービスの質の高めたことは間違いない。一方で裏返しとして、企業としての論理や顧客のニーズよりも「現場のこだわり」が優先されてきたことも否定できないだろう。

 その日本企業においても法令順守、規程順守が求められるようになった。大手一流メーカーはもちろん中央省庁でさえ「規程違反」や「品質偽装」が露見しているが、近年、急速に違反が増えたというよりは、そもそも文字化された規程や品質基準と、現場でかたくなに守られてきた実質的な業務手順との間に乖離(かいり)があり、それが露見したというのが実態だろう。

 実質的には現場に丸投げされてきた業務遂行に関する権限(現場ではそれに応え、強い職人意識をもって業務を遂行してきた)と、それではガバナンス不足だとする社会の要請との間で、多くの日本企業(役所を含む日本型組織)が悩み迷っている。

 バス事業者も例外ではない。問題は、その迷いが、第一線で働く者のモチベーションを削ぐことにつながっていないか、という点である。

(高速バスマーケティング研究所代表)

 
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