「昭和の旅行」(職域旅行などの「社会的旅行」や、発地型のパッケージツアー)から脱却し、本格的な個人旅行時代を目指すには、旅行流通のあり方を変える必要があることを、先週までご説明した。
それでは、その時代に求められるバスサービスとはどのようなものだろうか。
発地型のパッケージではないのだから、バスサービスは、「移動」領域(主に1次交通)と「観光」領域(2次交通および着地型ツアー)に分かれるだろう。
ただし、それらが、「波動の大きい観光需要より、安定した利用を見込める“地元の人の都市への足”需要を重視する高速バス」と「コースを削減、統合したため、ますます総花的な内容となってしまった定期観光バス」という、従来のままの組み合わせでないことは確かであろう。
「移動」領域については、すぐにでも対応可能な内容として、高速バス商品の多様化が考えられる。現在の高速バスは、停留所(ルート)選定や車両(外観、内装)が、“地元の人の都市への足”需要に重きを置くため、装飾を廃した合理的なものになっている。
一方、30分間隔など高頻度運行される昼行路線においては、都市側を午前に出発する便および地方側を夕方に出発する便の乗車率は低い。
これらの便の一部を、たとえ運行上の無駄があったとしても、観光集客施設や宿泊施設に延伸し個人観光客の取り込みを図ることは、大きな負担なく実現するはずである(現実にさまざまな障壁があることは承知しているが、十分に乗り越えられると考えている)。
現状において高速バスにおいて観光需要の比率が大きくないのは、バス事業者が地元(沿線在住者)に特化してマーケティングを行うとともに、旅行会社を中心とする旧来の旅行流通のあり方が、パッケージツアーを優先していたからである。
バス事業者自身が、観光客の取り込みを意識するとともに、ここまで述べてきたように旅行流通のあり方さえ変われば、高速バスと個人観光客の親和性は十分に大きいと考えている。
(高速バスマーケティング研究所代表)