【岐路 バスと観光 新たな関係 92】高速バスのバスターミナル5 成定竜一


 バスターミナルについて考えるうえで忘れてはいけないのが、バスターミナルの「発着枠」が、そのままバス事業者のいわば「営業権」と直結することである。

 高速バスを含む乗合バス事業は、2002年以前は国から事業者に対し地域独占的に事業免許を与えられていた。つまり、原則として地元の既存バス事業者のみが乗合バス事業を展開することができ、複数県をまたがる高速バスの場合は、起点側と終点側のそれぞれの既存バス事業者らが「共同運行」という形で事業免許を与えられた。

 バスターミナルは、バス事業者自らが整備することが多かった。前述の通り、地元の乗合バス事業者は原則として1社だからそれで問題なかった。例外的に同一都市に複数事業者が存在する場合などは、当該事業者らと自治体が共同出資するなどして整備された。

 一方、道路運送法改正により、乗合バス分野でも新規参入を受け入れることとなったが、参入に際しては、事業者自身が停留所を確保することが事実上必須であった。駅前など一等地の公道上に停留所を新設することは、道路管理者や交通管理者など多くの機関の間で調整が必要でなかなか困難である。

 既設のバスターミナルの多くはこのような新規参入を想定しておらず、門前払いするケースが多かった。高速バスを含む乗合バスへの参入意欲を持ちながらも、停留所を確保できなかったために断念した事業者も全国にみられる。
 既存事業者でも、前述の通り、公共の新しいバスターミナルが整備されたことで、結果として発着が認められる便数、台数が制限を受けるケースが生まれている。

 前者では、多くのバスターミナルが、そもそも乗合バス事業への新規参入を想定していなかった点が問題である。後者では、新設バスターミナルの整備(開発計画、地域住民や周辺商業施設との調整など)に際し、発着便の「総数」が独り歩きすることが問題である。

 バスターミナルの容量は、発着総数よりも繁忙日の特定の時間帯に1時間あたり何台が発着可能かの「瞬間風速」の方が重要なのに、開発側がそれを認識していないのだ。

(高速バスマーケティング研究所代表)

 
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