自由席制の路線については、先着順乗車であるため乗客に並んでもらう必要があり、原則としてバース(乗降口)番号を割り振らなければならないと書いた。多くの場合、並んでもらう場所は、そのバースの前である。ターミナルの一部(待合ロビーや発券窓口)が屋内で、乗降を行うバースが屋外にあるターミナルもあるが、その場合はどうしても乗客には屋外に並んでもらうことになる。
「バスタ新宿」では、成田・羽田空港行きなど定員制路線は屋外の「Aエリア」に集約されており、乗客は屋外のバース前で列を作るしかない。定員制路線の発車を、待合ロビーから直接乗車できる「Bエリア」に移せば、空調が効いた屋内で整列してもらうことができる。
ところが、Bエリアにある三つのバースは、構造上、3台のバスが同時に入線し、同時に発車することを前提に作られている(Aエリアの三つのバースは、バスが別々に入線、発車することができる)。
空港線はホテル始発の便が多くバスタ新宿は途中経由地となり、入線時刻にばらつきが大きいため、空港線をBエリアに移すと他の路線の車両の入線時刻まで影響を受けてしまい現実的ではない。あらかじめオペレーションまで想定しながら設計することができていれば、と悔やまれる点である。
ただ、考えてみれば、並んでもらう場所は必ずしもバースの目の前でなくとも構わない。夜行便の一部は、地上スタッフが事前に「チェックイン(乗車受付)」を行うが、昼間は短距離、定員制路線の整列乗車場所、夜間は長距離夜行路線のチェックインの場所として「二毛作」が可能なよう待合ロビーの一部を仕切ることができれば、限られたスペースを有効に活用できるとともに、定員制路線の乗客も空調の効いた空間で整列することができる。
朝の発車が多い短距離路線や空港線、定期観光バスなどと、夜間の発車となる長距離夜行路線など、乗り入れ路線の性格をよく知ったうえでオペレーションを決定し、それを元に施設を設計することができれば発着便数を最大化することができるはずである。
(高速バスマーケティング研究所代表)