【岐路 バスと観光 新たな関係59】高速バス市場のこれから12 成定竜一


 高速バス「第二の市場」は、ウェブ予約が定着した後、突然のように誕生した。その流れをけん引したのが「楽天トラベル」高速バス予約サービスであり、筆者はその事業責任者だった。

 筆者はホテル勤務時代にレベニュー・マネジメントを担当していたので、その概念とノウハウを高速バス各社に伝達した。ほぼ100%がウェブ予約であり、オペレーションや固定観念の障害がなかったこの市場では、価格変動が一気に常識となった。

 ただ、現状ではレベニュー・マネジメントの本質は理解されず、ただただ予測される乗車率に応じ、値上げ・値下げが行われている。特に閑散日の客単価下落は激しい。予約サイト(OTA)や比較サイト(メタサーチ)への依存度も大きいから、送客手数料の負担も大きい。

 そのような中でも、これまで予約サイトにひもづいていたリピーターを、自らのリピーターとして囲い込むことに成功しつつある事業者も見受けられる。

 彼らの特徴は、これまで予約サイトの背後に隠れ、ぼんやりと存在していたバス事業者の名前を「ブランド」として確立させたことである。

 例えば、シャワールームやフリードリンクサービスを備え、乗車前後に使える待ち合いラウンジ、超豪華車両、時には「座席数限定で東京―大阪500円」といった“目玉”運賃など話題性の大きい商品でメディアに露出し、事業者名または企業ブランドの認知を向上させる。

 そのうえで、自社サイトを充実させると共に、会員プログラムを拡充させる。これにより、自社を指名買いしてくれる乗客が増加する。自社サイトからの直予約の比率が上がることで、送客手数料負担が減少するとともに、特に閑散日の極端な値引き競争から解放される。

 いいことばかりのようだが、残念ながら、そのような「王道」を歩む気概もなく、低収益ながらも何とか飯を食える現状に満足している事業者も多い。

 もっとも、メディア露出と会員プログラム充実と一口に言っても、現実には大変困難な取り組みだ。

 (高速バスマーケティング研究所代表)

 
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