明けましておめでとうございます。
2019年の新しい年を迎え、謹んで新春のご挨拶を申し上げます。
昨年を振り返りますと、2018年は、観光庁が発足から10周年を迎える節目の年でありました。また、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界文化遺産に、「来訪神:仮面・仮装の神々」が世界無形文化遺産に登録され、さらには2025年の万国博覧会が55年ぶりに大阪で開催されることが決定するなど、地域ににぎわいを与える明るい話題が続きました。
その一方で、わが国は昨年、平成30年7月豪雨や9月の台風21号上陸、北海道胆振東部地震など大規模な災害が相次ぎ、各観光地にも深刻な影響を及ぼしました。
こうした状況の中、一連の災害を受け、関西国際空港の早期復旧に向けて官民挙げて取り組むとともに、日本政府観光局(JNTO)コールセンターに365日24時間の多言語対応体制を確立するなど、関係省庁・機関とも連携し、さまざまな場面における外国人旅行者の情報入手手段の多重化を図り、災害などの非常時においても外国人旅行者が安心してわが国を旅行できるように緊急対策を決定しました。また、観光需要の早期回復のため、西日本での「ふっこう周遊割」や北海道での「ふっこう割」も導入しました。
これらの取り組みによって、災害による影響を最小限に収めた結果、訪日外国人旅行者数については、災害発生後に伸び率の鈍化傾向が見られたものの、その後順調に回復し、12月には史上初めて年間累計3千万人を突破し、過去最高を記録しました。
このインバウンドの効果を全国に波及させ、2020年に4千万人、2030年6千万人の目標を達成するためには、地方誘客と消費拡大に向けた取り組みを推進していくことが重要と考えております。
インバウンド拡大に向けた取り組みについては、欧米豪市場を対象としたグローバルキャンペーンを強化するほか、新たな市場の取り込みに向けたプロモーション活動を強化してまいります。本年は、国内12都市で開催されるラグビーワールドカップ2019日本大会、さらにこれからも2020東京オリンピック・パラリンピック競技大会など大規模イベントの開催が予定されています。訪日外国人の長期滞在による消費拡大が期待されるほか、地域の魅力を発信する大きなチャンスとなるもので、開催効果を最大限に活用するため、官民連携のもと準備を進めてまいります。
また、地方への誘客を進めていくため、先進的なデジタルプロモーションを推進するとともに、「コト」消費の拡大に向け、ナイトタイムの活性化やビーチの活用等を通じた体験型観光コンテンツの充実、文化財や国立公園などにおける魅力的な多言語解説の充実などを通じて滞在時の満足度向上を図ってまいります。
併せて、観光地域づくりの担い手となる全国各地のDMOについては、外国人旅行者に選好される魅力的なコンテンツの開発・強化等に取り組む世界水準のDMOの形成・育成を推進してまいります。
昨年は、急増する訪日外国人旅行者の多様化するニーズに的確に対応すべく、観光に関わる新たな制度が施行された年でもあります。改正通訳案内士法の施行により業務独占規制が廃止されたほか、改正旅行業法の施行によるランドオペレーターの登録制度の導入、さらには住宅宿泊事業法(民泊新法)の施行により、同法に基づく民泊サービスの展開が始まるなど、訪日旅行者の利便性が拡大することとなりました。特に、民泊については、違法民泊の排除、届け出のためのシステムの利便性の改善など引き続き関係省庁や関係自治体と連携して、健全な民泊の普及に努めてまいります。
さて、観光産業の基幹産業化のためには、深刻化する人材不足を解消することが喫緊の課題となっております。観光庁では、女性や高齢者なども活躍できる環境を整備するとともに、生産性向上が一層効率的かつ効果的に推進されるよう支援してまいります。
また、昨年は出入国管理及び難民認定法が改正されましたが、本年4月からの施行に向け、宿泊業における外国人材受け入れのための環境整備を進めてまいります。
アウトバウンドについては、諸外国との双方向の交流拡大を通じて相互理解を深めていくというわが国の外交政策の観点からも極めて重要であり、強力に進めてまいります。新たな魅力あるデスティネーションの開拓を官民挙げて取り組んでいくとともに、特に若者の「海外体験」を広げていくための国民的ムーブメントを醸成するため、観光庁・旅行業界の呼びかけによる関係府省・経済界・教育界と一体となった横断的な組織の設置を進めてまいります。また、海外旅行者の安全確保に向けた旅行安全情報共有プラットフォームの構築も進めてまいります。
さらに、本年10月には北海道倶知安町においてG20観光大臣会合を開催します。わが国は、議長国として、観光分野の世界的な課題に対する議論をリードするとともに、わが国の観光政策および観光の魅力を世界に発信してまいります。
観光庁といたしましては、本年1月より新たに徴収が開始される国際観光旅客税の税収も活用しながら、観光ビジョンで掲げた目標の達成に向けて、政府一丸、官民一体となって取り組んでまいります。
観光関係の皆さま、国民の皆さまにおかれましては、今後とも観光政策にご理解・ご協力を賜りますようお願い申し上げて新年のご挨拶とさせていただきます。
観光庁長官 田端 浩