会員の資金対策しっかりと対応 新型コロナとの戦いに必ず勝つ
――20年の振り返りを。
新型コロナが2月ごろから国内にも広がり、まず、インバウンドがかなり落ち込んだ。当時は北原(茂樹)さんが会長だったが、これは大変なことになると、早速、協会にコロナ対策本部を設置した。北原さんが本部長、当時副会長の私が副本部長に就任した。
前年は3188万人の訪日外国人を受け入れた。近年はインバウンドに特化した施設や依存した観光地がかなり増えていた。
そのような中で訪日の数字がパーッと落ちた。われわれ業界は中小企業が多く経営体質も脆弱(ぜいじゃく)だから、おのずと資金不安に陥る。そこでコロナ対策本部が取り掛かったのは資金対策だった。観光庁、財務省、経産省も含めて陳情し、いろいろと考えていただいた。
結果、出てきたのが保証協会の重層的なセーフティネットと、政府系金融機関の日本政策投資銀行、日本政策金融公庫、商工組合中央金庫による危機対応資金だった。金融庁には都銀、信金、信組に至るまで、事業者がコロナによって資金不安や危機に陥らないよう資金供与をしっかり行うようにと指導していただいた。結果として、業界は相当落ち込みはしたものの、今まで何とか息をつないできたという状況だ。
ただ、今年の3月あたりにもう一度、金融の手当てが必要になるかもしれない。コロナ対策本部は再度、国に折衝しようと考えている。12月には全国各ブロックで、地域の運輸局、財務局、経産局参加のもと、会員と金融機関との懇談会を開催し、貸し渋りや資本性劣後ローン、各地域特有の課題について情報を共有するとともに、意見を交わしたところだ。
――21年の展望と日本旅館協会の重点事業は。
今は90%がコロナ対策だが、それ以外にもさまざまな問題がある。「労務・生産性向上」「EC戦略・キャッシュレス」の各委員会で、若くて優秀な委員が議論している。
労務の問題は、外国人労働者の問題も含めて、コロナが社会に与えている影響を見ながら、いくらかの修正を加えて議論することになるだろう。ECやキャッシュレスは、このコロナ下でなおさら重要になった。ITも含めてスキルに長けている人たちが議論しているが、われわれの業界は年配者が多く、概して苦手な人が多い。ただ、先進的なところはものすごく進んでいる。その差があまりに色濃く、業績にも反映されることは、私は望ましいことではないと思っている。知識をどう普及させるかが課題だ。
――Go Toトラベルと雇用調整助成金の特例措置の延長を望む声が業界内に多かったが、ともに延長が決まった。
あらゆるチャネルを使い、陳情した。
オリンピック・パラリンピックが景気浮揚の契機になると思う。だからGo Toトラベルについては、割引率が漸減しても、オリパラまでは続けることが望ましい。Go Toトラベルが仮に1月で終わりになると、オリンピックまでの数カ月間は生き延びるのが大変なところだった。
雇用調整助成金は、われわれはかなり助かっている。既に2月末までの特例延長が決まっているが、Go Toトラベルと一緒に動くべきだと考えている。そこを訴えていきたい。
建物にかかる固定資産税は、来年の支払い分が減免され、今年の支払い分は1年間の猶予が決まっているが、それをさらに6カ月延長するよう陳情している。同時に、土地にかかる固定資産税も減免するようお願いしている。ゼロ回答はないはずだ。
コロナとの戦いに、われわれは必ず勝つ。さまざまな支援もあり、必ず生き延びるだろう。
ただ、復興に水を差す動きがあるのが残念だ。メディアによる過剰報道だ。政府が行うことに何でも反対し、Go Toトラベルにも反対。われわれはコロナとの戦いとともに、Go Toトラベルの社会全般に及ぶ有益性を十分説明しなければならない。
オリパラは冷静に考えれば、必ずやれる。ワクチンができて、治療法もかなり確立される。体操の内村選手が「できないではなく、どうすればできるかを考えるべきだ」とメッセージを発した。私は感動した。新興国は必死になってオリパラを誘致する。国の力、明日への力になるからだ。プロ野球で2万人の観客を入れたが、コロナにかかったという話を聞かない。野球はかからなくてオリパラやGo Toトラベルはかかるのか。メディアはもっと冷静に報道してほしい。
――宿泊4団体との連携について。
今、どんな状況で、何をしなければならないか。認識は共有できている。これからも基本をしっかり話し合い、必要があれば共に行動を起こしたい。
――会員に一言。
置かれた状況は皆、同じ。個々の経営に立ち入ることはできないが、われわれは会員のためにしっかりと行動する。何か相談があれば、遠慮なく協会に言っていただきたい。及ばずながら一生懸命力を尽くすつもりだ。
浜野会長