問われる行政のやる気
一般の住宅に旅行客らを有料で泊める「民泊」を本格的に解禁する「民泊新法」の法案が、今通常国会に提出される見込みだ。
焦点は民泊の年間営業日数の上限だ。「180日以下の範囲内で適切な日数」とする規制改革実施計画が昨年6月に閣議決定されているが、民泊推進に慎重な旅館業界は「30日以下」などと主張。一方、民泊推進派の不動産業界は「180日以上」と、主張は真っ向から対立している。
営業日数の定義を巡っても対立。日本旅館協会の要望書では顧客が予約可能な日数、不動産業界は顧客が実際に宿泊した日数が営業日数だとしている。両業界ともに政治家、関係省庁などへの陳情活動を展開。法案の中身がどうなるかが注目されている。
世界で急速に普及している民泊。ただ、問題点は少なくない。全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会と日本旅館協会が昨年3月に行った「緊急フォーラム」では、フランスのホテル団体のトップが同国の民泊の現状を報告。民泊がテロの犯人の潜伏先となったことや、パリ市内のホテルの稼働率が著しく低下していること、同市内の住居の多くが民泊に転用され、住宅不足が深刻になっていることなどが挙げられた。
国内の民泊は現時点で、旅館業法上の簡易宿所の営業許可を取った施設、国家戦略特区内で一定の条件をクリアした施設、そしてイベント開催時に自治体の要請で住宅での宿泊受け入れを行う「イベント民泊」などに限られる。
簡易宿所については昨年4月、営業許可を取りやすくするよう面積要件を緩和するなど旅館業法施行令を一部改正。国家戦略特区内での民泊も昨年10月、顧客の最低滞在日数を「6泊7日以上」から「2泊3日以上」に緩和する政令改正が行われた。それに続く今回の民泊新法制定だ。
公的なお墨付きを得ないヤミ民泊が各地で横行している。新法では住宅提供者や管理者、仲介事業者の行政への届け出・登録を義務付けるというが、どこまで実効性があるか。違反をしっかり取り締まる行政のやる気と能力が問われる。
【森田淳】