【旅に出よう~温泉はにっぽんの宝~100】海外の温泉と日本の温泉 山崎まゆみ


 日本しかない楽しみって、いつもそこを原点に考えてインバウンドに取り組んできました。

 海外の温泉でも、もちろん日本では味わえない、想像を絶するようなワイルドな経験もしてきました。

 あれは、数年前にニュージーランドを訪ねたときのことです。

 ニュージーランドは太平洋プレートとオーストラリアプレートがぶつかる部分に位置していますが、温泉地で知られるロトルアや、ニュージーランドの温泉街道は、まさにそれらのプレートの上にあります。世界第2位の規模を誇り、国内の15%の電力をつくるワイラケイ地熱発電所もここにあります。

 温泉という点で見て、土地の力を持つニュージーランドですが、温泉は入浴よりも、見学に重きを置いているように感じました。入浴施設(スパ)もありましたが、それ以上に見学スポットがすごく多い。

 例えば、「ワイオタプ・サーマル・ワンダーランド」は今でもその映像が浮かんできます。ここには金運が高まると地元の人に愛されている池があるのですが、池の中央部から湯が湧いており、その湧出口周辺が金色の円を描いています。

 確かに、グリーンともブルーとも言いがたい水の中に、1カ所だけ黄金のサークルがあるのですから、心に残る景観です。私は写メで撮り、帰国後半年間は携帯の待ち受け画面にしていました。

 入浴もしてきました。「ヘルズゲート」で泥湯を体験。「ケルセンクリーク」という滝を眺めながら川湯にも入り、牧場のど真ん中にある市民温泉プールでは上半身にタトゥーがある体の大きな男性たちに囲まれました。振り返れば、実に多彩な温泉でした。

 また、現在も温泉地で暮らすマオリ族の村にも行きました。蒸気蒸しで料理を作っていました。まるで別府の鉄輪みたいでした。

 この旅は天気にも恵まれ、青空と心地のいい風で爽快でした。でも、帰国したら、日本の温泉に行こうって思っていました。しっとりとした湯気、蒸気…、日本の温泉特有の潤いが、とても恋しくなったのです。

 インバウンドに関する仕事で、日本の特有の愉(たの)しみ方を考えるときに、いつも海外の温泉での出来事を思い出します。

 そして海外にはなくて日本にあるもの、そう考えたときに、湿気であることに、ニュージーランドの温泉で気付きました。

(温泉エッセイスト)

 
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