常日頃、インバウンドに温泉を活用させたいと記していますし、高齢者に優しい温泉地づくりも推奨しています。そしてこれからは若者に向けて旅に誘う仕事もしていきたいと思っています。個人旅行が主流である今、細やかな旅のニーズにあわせていく必要があるからです。
先月、新潟県妙高市で開催された新潟日報主催の「みらい大学」で基調講演とパネルディスカッションに登壇しました。テーマは地域資源である温泉を活用した集客。シンポジウムは街づくりを語り合う場ではありましたが、会場に集まってくださったのは県内からの温泉好きの方々でした。
新潟県の温泉地数は全国で第3位を誇ります。けれど新潟県内での需要が高いのが特徴で、全国的には知られていない宿でも県民から愛されていて、稼働率が非常に高い宿が多数あります。県民が県内の温泉地や宿を支えているのです。
パネルディスカッションでは、地域活性化を研究する県内で学ぶ大学生も参加。
私が学生だった頃は旅をするお金を得るためにアルバイトをするのが一般的な学生の姿であり、私自身もお金を貯めては旅に出ていました。決して特異な学生ではありませんでした。現在、若者が旅に出ないという風潮の中で、そんな世代を旅に誘うにはよほど魅力的な旅が必要であると思っていました。
学生さんはこう言いました。「温泉こそ地域資源。ただ温泉を目的とした旅はしない。旅先に温泉があれば入る程度」とのことで、その若者をどのように温泉へ向かわせるか。
例えば“ポケモンGO”のように現実世界とCGの世界を織り交ぜる手法でPRポスターを作る。ポスターにはバーコードがあり、それを読み取ればスマホでも情報を得られる。そして温泉に入浴する映像やラーメンを食べている映像等、活字だけでなく映像も楽しめる仕組みを作る。温泉とラーメンの疑似体験で誘うのだそうです。
今はSNSで情報発信する時代になってきていますが、ポスターから情報を読み取り動画に飛べる仕組みは思いつきませんでした。
ターゲットとなる若者世代が自ら旅を誘う手法を考えてもらうことで、同世代の心をうつプロモーションとなるでしょう。
来年度から跡見学園女子大学で「温泉と保養」の授業を持ちます。二十歳過ぎの今の女子学生の感性は未知なるものであり、今は期待で胸膨らませています。彼女らからたくさん学び、若い女性が旅に出る心持ちをリサーチしようと思っています。
(温泉エッセイスト)