跡見学園女子大での初年度の講師の仕事を無事に終えました。私が担当した「温泉と保養」の講義は155人が履修してくれ、ほぼ3年生だったので、それだけの人数の20歳ほどのお嬢さんに、毎週、囲まれていました。
彼女たちでびっしり埋まった教室は、少し甘ったるく、酸っぱさも混じった、初々しい匂いがしていました。あまり化粧をしないようで、人工的な香りは混じっておらず、私もこんな匂いをまとっていた時期もあったなぁと記憶がよみがえる、若い女性特有の匂い。この匂いの記憶と共にいまは懐かしさが胸にこみ上げてきています。
さて、授業では温泉の歴史を学び、さらにこれから求められる温泉像を伝え、そして最終レポートでは、学生さんたちが興味を持つ温泉地や旅館をデザインしてもらい、どうしたら若者が旅先に温泉を選ぶのかを言葉にしてもらいました。抜粋して皆さんにお伝えしますね。
履修している時点で温泉に興味を持っていることは言わずもがなですが、基本的に彼女たちは温泉に行きたいと思っています。ただ「古臭い」「大人(年寄)のもの」といったイメージを強く抱いています。
彼女たちの中には建物のデザイン性を求める女性もいましたが、多くは、古くからの温泉旅館を情緒ととらえ、今風のデザインに改修を求めているわけではありませんでした。
彼女たちの希望は「可愛い浴衣・持ちもの」です。いま旅館さんでそろえている色浴衣といったことだけでなく、浴衣、丹前、下駄、籠、冬でも浴衣のまま外歩きできるような着物コートなど、身に付けるモノです。浴衣だけでなく、旅館のアメニティーを入れる袋も統一したデザインにすると好評です。
そんな彼女たちにとって、道後温泉と蜷川実花さんのコラボはとても響いたようで、写真を撮りたくて道後温泉に行った、行きたいという声も多数ありました。若い女性に人気のあるデザイナーに身に付けるモノも含めたトータルデザインをしていただくのも一つの手です。
加えて、彼女らは浴槽に設置されているシャンプーリンス、脱衣所に置かれている基礎化粧品類も、知っているブランドがいいと言っています。
インスタ映えが昨年の流行語大賞になりましたが、見栄えを良くしようと、宿の増改築や温泉街全体の整備など、大がかりに取り組むとかなりのお金がかかります。そうではなく、写真映えするちょっとしたモノをデザイナーに頼み、それらを若い女性たちが情報収集で使用しているSNSで伝えます。それがきっかけで来てくれたら、彼女らは頼まなくともSNSで拡散してくれ、さらに若い女性を呼び込む連鎖反応が起こるはず。
小さな変化が大きなうねりをもたらす可能性がある。これがSNSの力というものでしょう。
(温泉エッセイスト)