とうとうパンデミックとなった。残念ながらこの事態はまだしばらく続きそうである。前回、政府から出された緊急対応策の概要を紹介したが、今回はこのうち雇用調整助成金について詳しくお伝えしたい。
(1)助成率・助成額
中小企業は、休業手当または教育訓練実施時の賃金相当額、出向を行った場合の出向元事業主負担額のそれぞれ2/3(大企業は1/2)、対象労働者1人当たり上限8330円が助成される。支給限度日数は1年間で100日。教育訓練を行った場合は、1日1人当たり1200円の教育訓練費が加算される。
(2)経済上の理由
新型コロナウイルス感染症の影響を受けたことにより事業活動が縮小―が、休業などのための「経済上の理由」となる。風評被害による観光客の予約キャンセルなどが該当する。
(3)最近1カ月の売上高10%以上減少
通常は最近3カ月の生産指標(売上高など)の減少が要件だが、今回の特例ではその期間が1カ月に短縮された。比較対象は前年同期。
(4)実施後の提出でよい
通常は助成金申請のための休業など計画を実施前に提出する必要があるが、今回の特例では実施後の提出でも事前提出とみなされる。ただし5月31日までに提出する必要あり。
(5)休業とは…
従業員を「休ませる」ことであって、営業を休むことではない。例えば旅館を全館休業しても、従業員に事務作業や館内清掃などをさせる場合は「休業」とはみなされない。
(6)一部従業員でもよい
全員一斉に休みとする必要はない。例えば従業員の半分を出勤、残り半分を休みとする場合、休みとした従業員分の休業手当は助成対象となる。ただし従業員の一部を休業とみなすのは、「終日(まる1日)」単位で休ませる場合に限られる。勤務時間を短くするというような「短時間休業」は、「1時間以上」、かつ「全員一斉」である必要がある。
(7)雇用したばかりの労働者にも適用
通常は雇用保険の被保険者として雇用されている期間が6カ月未満の労働者は助成対象とならないが、今回の特例ではその範囲が拡大され、新卒者などの新規雇用労働者にも適用される。
(8)雇用量が増加していてもよい
最近3カ月の雇用保険労働者や受け入れ派遣労働者の「雇用量」の平均値が前年比で一定以上増加している場合は助成対象とならない、という規定が特例により撤廃された。
(9)過去の受給実績は問わない
今回の特例では「クーリング」が撤廃され、前回支給対象の期間から1年未満の事業主も対象となる。
(10)7月23日までの休業等開始が対象
特例の適用対象となる休業などは、本年1月24日以降で、初回の休業など実施の「初日」が本年7月23日の分まで。
(11)助成金の支給申請は…
1~3カ月分の「賃金締切期間」で、期間の設定は任意。休業など実施期間の終了後、2カ月以内に支給申請する。
(12)相談窓口は…
各都道府県の職業対策課、助成金センター、ハローワークが相談窓口となる(一部の県では部局の名称が異なる)。
(株式会社リョケン代表取締役社長)