この秋はGo Toトラベルで多くの旅館が潤った。中にはトップシーズン並みの忙しさとなった旅館も少なからずあるようだ。
だが今の状況を決して見誤らないでいただきたい。ほとんどの経営者がご承知と思うが、キャンペーンの終了と同時にこのブームは終わる。それどころか、間違いなく大きな反動減がやってくる。Go Toトラベルは、我慢していた旅行欲求を一気に吐き出させる効果を生んだが、同時に需要の先食いもしているのだ。
予定されているキャンペーン終了は1月末。そして多くの旅館で、2月以降の予約が入ってきていない。例年であればこの時期、すでに大きな団体見込みも上がってきていてよいはずだが、今年はまだそれがない。2月以降、春先に向けての対策を急ぐ必要がある。
中規模以上の旅館では、やはり団体需要が商売の基盤であり、ことに春先はそれに負うところが大きい。しかし今はそれが見込める状況にない。とすれば、個人客や小グループ客での稼働を基本に、団体客がいつ動きだしても取り込めるように、ぬかりなく手を打っておく、という二段構えで臨むしかなかろう。
旅行マーケットの縮小はいかんともし難いが、せめて落ち込みを最小限に食い止めるため、やれるだけのことはやっておきたい。以下のようなことのうち、可能な対策は打っておきたい。
(1)過去の利用客への再アプローチ
何度もお伝えしているように、こういう時に最も頼りになるのは顧客リストである。未整備の旅館は、今からでも遅くはない。これを整備し、見込み度の高いところから何らかのアプローチを仕掛けてみよう。
(2)季節の魅力発掘
例えば春には春の良さというものがあるはずだ。これにあらためて光を当てて魅力を伝えたり、「春らしい過ごし方」の提案などを考えてみよう。
(3)地域催事等の活用
コロナ禍が落ち着きを見せてくるとすれば、地域の催事なども少しずつ再開されるようになるかと思う。これらを見逃さず、誘客ネタにつなげられそうなものはぜひつなげよう。
(4)情報発信
HPの中身が長い間変えられずに放置されていないか? もしそうなら、この機に新鮮味のある内容にリニューアルしてみよう。またSNS活用などにも、再度力を入れてみてはどうか。
(5)次なる商品の用意
ここで言う「商品」とは、何らかの話題性あるものだ。施設の模様替え、地元アーティストによるミニイベント、他館との連携、異業種とのコラボなど、あらゆる可能性を探ってみよう。
(6)地道な営業活動
一般団体や募集団体などの動きをいち早くキャッチするための旅行社営業はもとより、地元の法人などへの営業活動もやってみよう。今の旅行再開ムードの中、「そろそろ」と考えるところも出てきていると思う。
これらを別々のこととして考えるのでなく、なるべく複合させて有機的な効果を図りたい。
「今は忙しくてとてもそんなところに手が回らない」――繁忙シーズンにはよくこういう声が聞かれるが、忙しい今こそ、閑散期に向けた手を打っておくことが肝心である。何もしなければ、なるようにしかならない。
(株式会社リョケン代表取締役社長)