【旅館ホテルのおもてなし 24】ご予約からお見送りまで11 大谷 晃


 ご要望に対応できないこと

 お客さまの中には無理なご要望をされる方もいます。その時、「知りません」「ありません」「できません」と拒むだけでは、そこですべてが終わってしまいます。どうしてもご要望に沿えそうにない時は、まず、そのことに対してお詫びし、次にその理由を申し伝え、さらに代案を提示します。「〇〇はございませんが、○○ではいかがでしょうか」といったようにです。ここまでしてくれた、ということでお客さまは納得されます。

 また、自分がわからないこと、できそうにないことを聞かれた時は、知ったかぶりや、あいまいな答え方をせずに、「ただいま聞いてまいります」「確認の上、お返事させていただきます」ときちんと伝え、すみやかに対処します。返事もなるべく早くお客さまに伝えます。時間がかかりそうな時は、途中経過をお伝えすることも大事です。

 退室

 退室する時は、もう一度、お客さまのお役に立てることはないか、確認することが大切です。例えば、夕方外に出られるお客さまには、「このあたりは夕方になると寒くなりますので上にはおる物をお持ちになったほうがよろしいですよ」など、アドバイスして差し上げましょう。暗くなって帰り道がわからなくなった場合に備えて、泊まっている旅館ホテルの名前が分かる物をお渡ししておくなども良いでしょう。退室時はお尻を見せないようにして下がるのが基本です。主役はお客さまです。仲居は黒子として、お客さまの邪魔にならない、音を立てない動きを心がけます。このような所作もまた、「おもてなし」の形です。

 ●途中でお部屋に伺う場合

 仲居のちょっとした気づかいという点では、赤ちゃんをお連れのお客さまには、「ミルク用にお湯をお持ちしましょうか」などとお声がけすれば喜ばれます。ボタンがとれた、コーヒーをこぼして染みができた、などのお困りごとには、仲居が積極的に対処して差し上げれば、それだけでお客さまから感謝されます。

 いずれにしても「お客さまに言わせないサービス」、お客さまが望んでいらっしゃることを先取りしてサービスすることが、旅館ホテルのおもてなしというものです。

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 ■日本ホテルレストラン経営研究所=ホスピタリティ業界(旅館、ホテル、レストラン、ブライダル、観光、介護)の人材育成と国際交流へ貢献することを目的とするNPO法人。同研究所の大谷晃理事長、鈴木はるみ上席研究員が監修する書籍「『旅館ホテル』のおもてなし」が星雲社から発売中。問い合わせは同社TEL03(3868)3275。

 
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