現代は、普段の生活では着物を着る機会は多くありませんが、旅館ホテルは違います。和装が日常です。お客さまを常に心地良く迎え、楽しいひと時を過ごしていただくためにも、出迎える仲居は好感がもたれる身支度を整えておくことが大切です。きちんとした着こなしを常に心がけましょう。
●着付ける上での注意点
襟(えり)(衿(えり))を抜き過ぎない
襟は抜き過ぎても詰め過ぎてもいけません。美しさに欠けます。
動きやすく
仲居は立ったり座ったりの動作が多いですから、その間に裾がはだけたりしがちです。また、手を伸ばしたりするうちに襟元や帯が着崩れすることもあります。どちらも見苦しいので気をつけましょう。
清潔を第一に
足袋が汚れているのは、見ていて良いものではありません。半襟も同じです。常に清潔であることを心がけましょう。
上品な着付けを
まず、全体にしわやたるみがないように着付けることです。折り曲げたり、巻き込んだりするときに、たるみ、ゆるみがあるとだらしない印象になります。動いたときの着崩れの原因にもなります。
また、全体のバランスも大事です。裾丈が短くなり過ぎない、おはしょりが出過ぎないことです。帯(お太鼓)の大きさなども、各人の体に合わせてバランスをとる必要があります。他の仲居に見てもらいながら研究しましょう。
●着崩れたときの対処
着物を着て忙しく立ち働きをしていたら、着崩れも起こります。そういうときは慌てず落ち着いて対処できるようにしておきましょう。
帯が着崩れた
お太鼓が緩んで崩れてしまうことはままあります。しかし、しっかりと結ばれた帯は帯枕で押さえられているので、そのまま結び目がほどけてしまうことはありません。帯締めを解き、お太鼓を整え直すだけでまず元に戻ります。
着丈が足りずおはしょりが出ない
背の高い人によく見られます。極端に短い場合は仕方がありませんが、腰ひもの位置をやや低くすることで、おはしょりを出すことができます。
裾がまとわりつく
着付けるときに下前部分を体に巻き込み過ぎていると、裾さばきが悪くなります。腰ひもから下の下前部分を三角に折り返しておくと、歩きやすくなります。
抜いたはずの襟が詰まってしまう
襦袢(じゅばん)の裾を下に引っ張って襟を抜き直します。その際、着物や襦袢の背側がだぶつくことがあるので、おはしょりを下に引っ張って、再び詰まってしまわないように整えます。
* *
■日本ホテルレストラン経営研究所=ホスピタリティ業界(旅館、ホテル、レストラン、ブライダル、観光、介護)の人材育成と国際交流へ貢献することを目的とするNPO法人。同研究所の大谷晃理事長、鈴木はるみ上席研究員が監修する書籍「『旅館ホテル』のおもてなし」が星雲社から発売中。問い合わせは同社TEL03(3868)3275。