一般的な会席料理の各品に沿って、いただき方の作法を見ていきましょう。
●先付け(突け出し)
先付けとは献立の最初に出される料理です。和え物や珍味など、季節の物が少量供されます。いただく前に、まず器、次に盛り付けの美しさ、次に料理の技巧を楽しみます。もてなす側が趣向を凝らし、季節感を盛り込んで演出してくれるのが先付けですから、その思いに応えることもいただく側の作法です。
いただくのに決まり事はありませんが、小さい器の物は手に持ってもよく、また汁気のある物は手にとっていただきます。その際、箸は必ず一度置きます。
●前菜(酒肴)
前菜は季節の素材を彩りよく盛り付けてある物です。食べる順番に決まりはありませんが、自分から見てまず左側を、次に右側を、最後に中央をと箸を入れるのが理にかなった美しいいただき方です。器の左側には薄味の物が、右側には比較的濃い味の物が並べられているからです。味の薄い物から濃い物へ、しかも見栄え良くいただくことが大事です。
前菜は先付け同様、すべてが酒菜(酒のためのおかず)です。お酒と交互にゆっくりいただきましょう。
●お吸い物(お椀)
日本料理において、お吸い物は季節を表現する重要な一品です。
次の五つの要素から成り立っています。
・椀種―主役となる具材
・椀妻―脇役となる具材
・青味―青物や葉物野菜など
・吸い地―汁その物。すまし仕立て、潮仕立て、みそ仕立てなど
・吸い口―薬味
お吸い物は味だけでなく、立ち上る香りも味わいのある料理といえましょう。ただし、おわんの扱いは慣れないとむずかしく感じられるかもしれません。基本はいたって簡単です。利き手が右手なら、まず、おわんの縁を右手で押さえます。次に左手でふたをとり、そこにたまったしずくをおわんの中に落としてから、右手に持ち換え、お膳の右脇に置きます。
おわんがどうしても開かない時は、漆器なら両手でおわん全体を締め付けるようにするとかすかにおわんがゆがんで、そこから空気が入り楽に開けることができます。お客さまの様子から無理なようなら、仲居が開けて差し上げましょう。おわんに絵柄が描かれてあれば、少しずらして絵柄を避けます。
まず吸い地を一口いただき、それから具材を口に入れます。終わったらふたを元に戻します。ふたを裏返しておわんに重ねて置くのは誤りです。
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■日本ホテルレストラン経営研究所=ホスピタリティ業界(旅館、ホテル、レストラン、ブライダル、観光、介護)の人材育成と国際交流へ貢献することを目的とするNPO法人。同研究所の大谷晃理事長、鈴木はるみ上席研究員が監修する書籍「『旅館ホテル』のおもてなし」が星雲社から発売中。問い合わせは同社TEL03(3868)3275。