日本料理では器は重要な要素となります。素材は陶器、磁器、木製などいろいろあり、それ自体が美術品や工芸品として評価されることも少なくありません。どう使うのか、決まりはあるのか、見ていきましょう。
●一器多様
西洋料理の器の場合は、同じシリーズで一式がそろいます。スープ皿からデザート皿、コーヒーカップに至るまで、同じ素材、同じ図案、同じデザインの物がセットで使用されます。一方、日本料理では、本膳料理や精進料理を除き、料理ごとに素材もデザインも異なる器を使う「一器多様」の取り合わせをします。
●正面
日本料理の器にはたいていの場合、正面があります。それは形や絵付けの位置により判断されます。器の外側に絵が描かれていれば、それをお客さまと向き合うようにして置きます。食べる人から美しく見えるほうを正面とします。器の正面が決まれば、決まり事にのっとった盛り付けをします。
●木目・年輪
木を素材としている器で、特に木目がはっきりしている物があります。「木地もの」とも呼ばれます。木目がついている物については、木目の粗いほうを正面に、目のつまった細かいほうを奥になるように置きます。木目のある茶托(ちゃたく)や木をくり抜いた椀(わん)などは見極めがつきにくいですが、注意したいところです。
●扇形
末広がりの縁起のいい形として、扇形は器にも用いられます。すぼまったほうが手前、広がったほうが向こうになるように置かれます。先へ広がる、すなわち末広がりになるようにするのが基本です。ただし、扇形であっても、開き加減によって、置き方はまた違ってきます。半開きの細長い形をした器は、要(すぼまったほう)を、食べる人から見て右側に置きます。
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