【旅館ホテルのおもてなし 76】飲み物をサービスする① 大谷 晃


 ●日本酒

 日本酒には冷酒と燗(かん)酒があり、お客さまの好みに応じて供します。夏、冷酒をお出しする際には、おけに砕いた氷を入れ、冷酒器を差し込んで、飾りの枝や葉などを添えて出すと涼しげな演出になります。また、冷酒は、銘柄が記された瓶などのまま宴席に運ぶこともあります。一方、燗酒はほとんどが徳利(とっくり)でサービスされます。

 ■お酒の注ぎ方

 酒を注ぐ時は、「お酒をどうぞ」「お酒はいかがですか」と一言添えて、お客さまの注意を引き、手に杯を持っているのを確認してから注ぎます。膳上に置かれた杯に注ぐ「置き注ぎ」はいけません。お酒はお客さまの前から注ぎますが、宴席の都合によっては後方からのこともあります。その時は、お客さまの右側から声をかけ注ぐようにします。料理は左側から出しますので、「料理は左から、飲み物は右から」と覚えましょう。大型の座卓で、お客さまとの距離が遠い場合は、徳利を持った利き手の袂(たもと)を反対側の手で押さえるようにして注ぎます。

 他の飲み物や器の時も片手だけの動作でなく、常にもう一方の手を添えて両手で行うことが基本です。

 〇徳利は絵や模様のあるほうが上になるように、中央部分を右手でしっかりと持ちます。注ぎ口が作ってある場合はそちらが下になります。

 〇徳利の肩口に、左手の人指し指と中指を下方から添えて、徳利の口先を静かに傾けて注ぎます。お客さまの杯に徳利が当たらないように注意しましょう。初めは細くしだいに太く、最後には細くといった具合に、徳利の中の酒が一度にあふれ出さないようにしながら注ぎます。

 〇注ぎ終わる直前に徳利の口先を手前に回し、しずくが垂れないようにします。徳利を杯から離す時は、徳利の口先を上げるより持っている本体のほうを下げる要領で行うと奇麗です。

 お客さまの視線は徳利や口先に注がれていますから、指をそろえ、何気ない仕草も上品に、美しく見えるようにしましょう。

   *    *

 ■日本ホテルレストラン経営研究所=ホスピタリティ業界(旅館、ホテル、レストラン、ブライダル、観光、介護)の人材育成と国際交流へ貢献することを目的とするNPO法人。同研究所の大谷晃理事長、鈴木はるみ上席研究員が監修する書籍「『旅館ホテル』のおもてなし」が星雲社から発売中。問い合わせは同社TEL03(3868)3275。

 
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