【旅館経営ワンポイント講座 1 】導入可能な事業存続策 渡辺清一朗


 もはや政治問題となってしまったかに見えるウイルス騒動。旅館ホテル経営者にとっても難しいかじ取りを強いられる状況が続いており、出口を見いだすことの困難さは並大抵ではない。

 昨年来、緊急対応融資による資金調達や既存融資の元本返済猶予などの策を講じ、事業者は事業存続のため必死に事業資金の確保を行ってきた。しかし、その事業存続策にも限界が見えてきたのではないだろうか。

 そのような状況下、もう一度基本に立ち返り導入可能な方策を考えてみたい。

 (1)経営改善支援センターの活用

 金融支援を伴う本格的な経営改善の取り組みが必要な中小企業・小規模事業が対象。各都道府県に問い合わせ窓口がある。kaizen_center.pdf (meti.go.jp)

 イ 405事業

 2013年より始まった経営改善計画策定事業。200万円を上限に計画策定やフォローアップにかかる費用の3分の2が支援される。

 ロ ポストコロナ持続的発展計画事業

 405事業の簡易版。上限20万円(総費用の3分の2)が支援される。

 (2)中小企業再生支援協議会の活用

 中小企業の窮状解決に向けた助言や支援施策・支援機関・弁護士の紹介などを行い再生計画の策定支援を行っている。

https://www.smrj.go.jp/supporter/revitalization/01.html

 イ 新型コロナウイルス感染症特例リスケジュール

 既存債務の元本返済猶予を行う制度。設定当初より要件が緩和されている。

 ロ DDS(デッド・デッド・スワップ)

 既存の債権を他の一般債権よりも返済順位の低い劣後ローンに切り替える手法。対象企業の過剰債務状態を解消して財務面の再構築を図り、再建可能性を高める仕組み。金融機関側で貸倒引当金が発生するため特に地方金融機関においてはハードルが高い。

 ハ 第二会社方式

 収益性のある事業を事業譲渡や会社分割により会社から切り離し、受け皿会社(第二会社)に引き継がせ、不採算事業は従来の会社に残したまま特別清算や破産することにより過剰債務を整理する方法。経営者保障に関するガイドラインも活用可能。

 (3)その他の方法

 イ 新型コロナ対策資本性劣後ローン

 日本政策金融公庫の制度。融資限度は国民生活事業7200万円、中小企業事業10億円。無担保・無保証人で最長20年の期限一括返済。金利は0・5%~2・95%となっており従来のものより使い勝手がよくなっている。

 ロ 地域再生ファンド

 地域経済活性化支援機構(REVIC:2025年まで存続延長)と地方金融機関等で組成したファンドの活用。

 ハ 特定調停

 日弁連が提唱する事業者の事業再生を支援する手法としての特定調停の活用(一体再生型という)。弁護士が、税理士、公認会計士、中小企業診断士等の専門家と協力して再生計画案を策定し、債権者と事前調整を行った上で債務免除に伴う税務処理等を実現し事業再生を推進する。保証人も同時に経営者保障に関するガイドラインに基づき保証債務を整理することが可能。

 ニ その他

 民事再生法や事業再生ADRの活用も可能ではあるが、その費用負担が容易ではないことなどから、中小事業者にとってはなじまないと思われる。全ての金融債権者の同意を得る努力をし、さまざまな私的整理の可能性を探ってみることをお薦めしたい。

(EHS研究所会長)


        

 
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